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運命の人  作者: 櫻塚森
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馬車は走る

架空イギリスの昔話。作者の都合の良いように話は進んでいきます。主人公達の名前はいろんなところで使いまわしされてますが、パラレルワールドなんだと思っていただければ幸いです。

柔らかい土の道から石畳へ、2頭だての馬車が走っていた。

馬を急がせる者の心は一陣の風となって通り過ぎていく。


「まぁ、あれは・・・?」

ゆったりと馬車に乗りピクニックにでも来ていたのだろう、年頃の娘と馬車に乗った貴婦人がはしたないと分かっていながらも通り過ぎていく馬車を身体で追った。

声を掛ける間もなく通り過ぎていく馬車にため息を漏らす。

「お母様、どうなさったの?」

萌黄色のドレスを見に纏った娘が尋ねると貴婦人はうっとりとした顔になった。

「あの紋章、ちらっとしか見えなかったけど、中に居られた方の輝くばかりの銀の髪。間違いないわ。アンジェリーナ、あなたの結婚相手に相応しいとお父様と私も思っている方が、今隣を駆けていったのです。」

あの速さで通りぬけた馬車の中に居た人を見分けた母に娘は感心してしまった。

「まあ、どなたですの?」

箱入り娘でしられている我が娘は、美しい。

誰もがデビュタントを待ち望んでいることだろう。きっと女王陛下も気に入ってくださるに違いない。

娘が首を上げてその方向を見たが、すでに馬車は見えなくなっていた。

「けれど、お母様、そのような方が私達の馬車に挨拶もなく通り過ぎていくなんて、失礼じゃありませんこと?」

貴婦人は軽やかに笑った。

この親子は、貴族という階級に位置する位に身をおいていた。

「あの方は、特別な方。現在も、そして未来においても我が女王陛下にとって、この英国を支えていく方ですもの、許されるわ。」

我が伯爵家よりも位が上のものといえば、公爵家以上となるが、それでも挨拶をしていくのが普通ではないかと娘は思った。

「お前のデビュタントには、ぜひあの方をパートナーにと考えているのよ、アンジェリーナ。ライバルも多いし、問題はあるのだけれど、お父様の力も借りて、何とか、あの方をお前のパートナーにしてみせますわ。」

今年のシーズンに女王陛下に謁見を控えたアンジェリーナはまだ見ぬパートナーに期待と不安を寄せていた。


彼は、その馬車が伯爵家のモノと分かっていた。

けれど、それ以上に急ぐ理由があったのだ。

時計は、もう直ぐ正午をさしている。

連絡が入ったのはその日の朝早くで、その連絡を得るや否や彼は馬に飛び乗った。

昨日は、領土の1つを視察するために、タウンハウスを離れ、馬車なら2日かかるところまで出かけていたのだ。

しかし、その領土で朝食を取る間もなく彼は馬を走らせて帰って来た。

そんなにも急がなくてもいいだろうと彼に仕える者達は言ったが、彼には一刻も早くこちらに帰って来る事が必要だった。

彼に命令できるのは王族と父親だけである。

それほどの彼が自分の仕事を無視してでも駆けつけたい相手がいるというのだ。

ロンドンから遠く離れた領土で彼に仕えている者達は、

その相手こそ、若主人が昔から追い求めていた存在に違いないと確信していた。


若主人は、女性にとんでもなくモテる。

父親の公爵閣下もそれはもう、とんでもなくモテたが、公爵夫人の美貌も引き継いでいると言われていた。

親しくしている友人を交えたら、その場に花が咲くほどの色男だ。

流れるような銀の髪に、エメラルドを思わせる緑の瞳。

人は彼を“銀の貴公子”と呼び、尊敬の念を寄せていた。




つづく

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