悲しみの果てに
先生「たく、また橘か・・・それにいつもおとなしい風間までどうしたんだ。」
優人「先生。」
先生「なんだ?」
優人「こいつは悪くないです。悪いのは俺だけだ。」
先生「しかし、2人でやったと聞いているのだが。」
優人「俊介はマフラーと手袋を守ろうとしただけです!単身赴任だった父親が今日帰ってくるんです。外国から帰ってきたお父さんと、いつも働いてるお母さんにマフラーをあげようとしただけなんです!」
先生「・・・・・」
優人「この一週間、ずっと・・ずっと一生懸命やってたんだ!それをあいつらが、踏みにじろうとしたから・・だから・・・・」
先生「そうなのか?風間」
俊介「はい・・・」
先生「そうか、まあ、それはあいつらにもよくいっておこう。しかし、暴力はな・・・・」
そんな感じで先生の説教を1時間近くうけ俺たちは解放された。
優人「これでやつらもお前に手出しはしなくなるな。」
俊介「優人君・・・・」
優人「なんだ?」
俊介「あのとき・・・・どうして、僕を家に呼んでくれたの?」
優人「あのときって・・・小1の終わりのときか?」
俊介「うん・・・」
優人「さあね、忘れた・・・・」
俊介「そうなんだ・・・じゃあ、なんで僕の事いつも助けてくれるの?どうして・・・・」
優人「理由なんてないよ。だって、俺たちは」
俊介「え?」
優人君はそれからにっこりと微笑んで言った。
優人「友達だろ。」
そういわれたときに僕はうれしさのあまり涙をながしてしまった。
優人「おい・・・どうしたんだよ・・・・俊介・・・」
俊介「・・・・何でもないよ・・・・」
時は戻って現在
純子「へー案外俊介って涙もろいんだねー。」
純子はにやにやして俊介をみてる。
俊介「純子にははなすべきじゃなかったかな・・・・」
サクラ「でも、いいですね。男の子同士の友情って・・・」
純子「でも・・・おかしくない?そんなに仲良かったのになんでそんな疎遠になってんのよ?」
俊介「・・・・さっき話したからわかると思うけど・・・優人君はお父さんがいない。」
純子「母子家庭ってやつ?」
俊介「そう。そして、優人君はお母さんのことをすごく大切にしてたんだ。」
サクラ「ああ。所謂マザコンってやつですね。」
俊介「!!」
純子「!!!」
2人とも言葉を失った。
サクラ「あれ、お母さんのことを大切にすることってそういうんじゃかったっけ・・・・」
俊介「え・・・えっと・・・・・間違ってはないことは・・」
純子「いや・・・完全に間違ってるよ・・・それ・・・」
サクラ「え・・あの・・・・」
純子「サクラ・・・あとで教えたげる・・」
2人ともへんな汗をかいていたみたいだ。
俊介「こほん・・・まあ、優人君のお母さんはほんとに素晴らしい人だった。美人で、やさしくて、ときにはきびしくて、優人君の事を世界で一番愛していた。でも・・・・」
サクラ「でも?」
俊介「・・・・・」
純子「俊介?」
俊介「優人君のお母さんは・・・・」
俊介の口が重くなる。そして、少しの沈黙の後に俊介は口を開いた。
俊介「殺されたんだ・・・しかも、優人君が中学1年のときに・・・・」
サクラ「え・・・・・・・」
俊介「学校から帰ってきた優人君が見たのは、変わり果てた優人君のお母さんの姿だった・・・」
サクラ「そんな・・・・・」
純子「殺されたって・・・・じゃあ、犯人は?」
俊介「まだ・・・つかまってない・・・その事件は優人君にとって・・とても立ち直ることが難しい出来事だった。」
サクラ「うん・・・」
俊介「身寄りがほかにない優人君は優人君のお母さんの古い友人の人に保護者になってもらって、今はひとり暮らしをしてる。」
サクラ「さびしくないのかな?」
俊介「さびしいという感情すらあの人は忘れてしまったのかもしれない・・・」
純子「?」
俊介「優人君には、当時彼女がいたんだ。彼女のおかげで立ち直る兆しもあったんだ。でも・・・」
サクラ「でも?」
俊介「彼女は死んだ・・・交通事故で・・・」
純子「まじ?」
俊介「ああ、立ち直りかけていた優人君を完全にどん底にたたき落とす事件だった。そして・・・・」
サクラ「そして?」
俊介「優人君は、町でうろついてる不良たちを半殺しにしてまわったんだ。今まで、優人君が仕掛けることはなかった・・・でも、まるで何かにとりつかれたかのように優人君は変わってしまった。」
サクラ「・・・・」
俊介「優人君が我に返ったときに、優人君はすべてを失ってしまった。両親だけでなく、友人も、そして、優人君自身の心も。優人君は言ったんだ。」
なにもいらない・・・・なにも得なければ失った時の悲しみをまた味わうことはないから。
帰宅後、サクラとザンティスが暮らしてるアパートにて。
ザンティス「そんなことが・・・」
サクラ「うん・・・」
サクラは体操座りのような体勢でしばらくだまっていた。そして、
サクラ「ねえ、ザンティス。わたし・・・どうすればいいかな・・・」
その言葉にザンティスは即答で答えた。
ザンティス「サクラ様。私はあなた自身の言葉や気持ちを大切にしていけばいいと思いますよ。」
サクラ「わたしの・・・・気持ち?」
少し考えて、サクラは立ち上がった。
サクラ「私は・・・橘君を・・橘君の心を救ってあげたい・・・絶対に・・・」
ザンティス「それでいいんですよ。」
ザンティスがにっこり笑った。
1週間後の放課後。
優人「で・・・・なぜこういうことになる。」
サクラ「♪」
ザンティス「まさか・・・こんな作戦を使うとは・・・・」
サクラは優人に提案した。自分のボディーガードをしないかと。優人はひとり暮らし。きっと生活も楽ではない。バイトという名目でザンティスの怪我が治るまでの間サクラの護衛になることに決まった。
優人「なんでこんなことに・・・・」
サクラ「いいじゃん♪暇なんでしょ♪」
優人「お前の国にほかの護衛はいないのか?」
サクラ「橘君強いじゃん・・・下手すればザンティスよりも強いかもしれないよ♪」
ザンティス「まあ、素手で我々と同じサイコティス星人を倒してますからね(笑)」
優人「・・・・・・」
そして、サクラは大胆にもこのような計画も立てていた。護衛なので24時間常に護衛するとまではいかなくてもせめて家は一緒であるべきだと。結果、ひとり暮らしで、一軒家に住んでいる優人の家にサクラ、ザンティスが居候するという形で決着がついた。その話がまとまったのが1週間後の今というわけであった。
サクラ「♪」
ザンティス「機嫌いいですね。」
サクラ「まあね。少し安心したから。」
ザンティス「安心?」
サクラとザンティスは優人に聞こえないように小声で話す。優人はその数歩前を歩いている。
サクラ「だって、もしほんとに橘君の心がなくなっていたのなら、私の申し出に応じるわけないもん。つまり、優人君の心はまだ生きてるってことでしょ?」
ザンティス「かなり時間はかかってますが・・・・」
サクラ「そうだとしても」
その時、
黒服の男A「ガイア帝国の皇女サクラだな!」
黒服の男B「覚悟!!!」
2人が長剣で襲ってくる。その剣をザンティスが剣で受け止める。
ザンティス「くそ・・・・」
黒服の男A「へへ・・・皇女殿下の護衛が手負いの身とはラッキーだぜ!!!」
そのとき、
黒服の男B「・・・・・おのれ・・・・・」
優人が短剣でもう一人の黒服の男をぶった切っていた。
優人「安心しろ・・・急所は外してある。」
黒服の男A「しね!!!!」
標的をザンティスから優人に変え、突進する。しかし、それを軽くかわしてみせる。
優人「なんか・・・・成り行きでこんなことになっちまったが・・・一度ひきうけちまったからな・・・」
優人は、ブレザーを脱ぎ捨て、短剣を両手にかまえて敵と対峙した。
黒服の男A「双剣騎士だと・・・・」
優人と黒服の男は一定の間合いを取る。優人の放つ殺気に黒服の男は思わず後退りする。その瞬間
を優人は見逃さず一気に間合いに入る。右から左から不規則な太刀筋で相手を翻弄し、相手の剣を弾き飛ばし、右の剣を相手の喉笛に突き付けた。
優人「終わりだな・・・」
黒服の男A「く・・・くそ・・・・」
両手をあげ膝をついた黒服の男。
ザンティス「おみごと・・・・」
サクラ「すごい!橘君!いつそんな剣術を覚えたの?」
優人「ああ・・・さっきザンティスからとある双剣騎士の奥義書みたいなやつを渡されてな・・・それ読んだだけだが・・・・」
サクラ「・・・・読んだだけって・・・・」
ザンティス「奥義書涙目ですね・・・」
優人「いやいやいや・・・・あの奥義書とんでもないことばっか書いてるぞ・・・・瞬間移動して、一気に相手の間合いに入り、両手の剣で相手を切り裂き、相手の背後にまわる・・・・瞬間移動すること前提かよ!!!」
サクラ「それはそれは・・・」
ザンティス「それできたら、確実に地球人離れしてますね。」
優人「んなもん渡すなよ・・・・」
それから、黒服の男二人を軍に引き渡したのち、3人は優人の家に帰ることにした。