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第6話 最初の部隊



地下水路の静かな音が響いていた。


リザードマンの戦士は、


しばらくこちらを見つめていたが、


やがて子供を連れて水路の奥へ


消えていった。


争いにはならなかった。


いい事だ。


皆を怪我させずに済んだ。


あのリザードマンには勝てたかもしれない。


が、得るものは何も無い。


最悪の事態を招くだけだ。


ハークが大きく息を吐く。


「ふぅ……」


「ちょっとヒヤヒヤしたぞ」


ゴエモンが頷く。


「でかかった」


コタロウが短く言う。


「強い」


アンは冷静だった。


「ですが敵対は避けられました」


「拠点としての価値は高いでしょう」


ふっ…。


いい奴らだ。


俺は、こいつらを守りたい。


イグニスは地下水路を見つめた。


水。


洞窟。


隣人。


悪くない。


今後もいい方向で交流したいものだ。


「……よし」


その時だった。


背後から、うめき声が聞こえた。


「グ……」


倒れていた洞窟ゴブリンの一体が動いた。


ハークが言う。


「まだ生きてる」


ゴブリンたちはゆっくり起き上がる。


だが——


戦う気はない。


むしろ怯えている。


イグニスは少し考えた。


そして言った。


「選べ」


ゴブリンたちが固まる。


「ここで逃げるか」


「それとも」


イグニスは笑った。


「俺の仲間になるか」


沈黙。


ゴブリンたちは顔を見合わせる。


やがて一体が頭を下げた。


残りの二体も続く。


アンが呟く。


「合理的判断ですね」


イグニスは頷いた。


「よし」


「じゃあ仲間だ」


フクが少し驚く。


「主……」


イグニスは笑う。


「人手は多い方がいい」


そしてフクを見る。


「お前」


フクが耳を動かす。


「はい」


「こいつらを任せる」


フクが目を瞬く。


「私ですか?」


イグニスは頷く。


この新人達のステータスは…


【洞窟ゴブリンA 】

固有スキル: 鑑定


【洞窟ゴブリンB】

固有スキル:盾化


【洞窟ゴブリンC】

固有スキル:見破る


なるほどな。


フクに向き直る。


「お前の千里耳は索敵向きだ」


「護衛も必要だろ」


アンが頷く。


「哨戒部隊ですね」


「合理的です」


ハークが笑う。


「もう軍じゃん!」


コタロウが短く言う。


「第一部隊」


イグニスは少し考えた。


そして言った。


「いや」


「まだ早い」


「でも——」


洞窟を見る。


仲間を見る。


「ここから始まる」


ビーグルが吠える。


「ワン!」


「…ふ。じゃあまずはお前」


新人に名前付けないとな。


鑑定持ち。


「……シル」


名前を与えた瞬間、


小さな光がゴブリンを包んだ。


気を取り直して次。


盾化持ち


「ジン」


次。


見破る持ち


「ミル」


こんなもんかな。


それにしても第1部隊か。


もう、土台は出来ている。


魔王軍。


その最初の小隊が生まれた。


その頃——


森の外れ。


一人の少女が走っていた。


赤い髪。


ボロボロの服。


顔の左には焼けた傷跡。


――魔女狩りの証。


少女は必死に森を走る。


「はぁ……はぁ……」


背後から声が響く。


「見つけたぞ」


白い鎧。


十字の紋章。


聖騎士。


「魔女の娘」


「逃げられると思うな」


少女は歯を食いしばる。


そのエメラルドの瞳は、


苦しさに歪んでいる。


それでも自由への炎が、


強く揺らめいていた。


そして森の奥へ走った。


その先にあるのは——


まだ小さな


ゴブリンの国。

読んでいただきありがとうございます!


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