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第5話 水の番人


ひとまず洞窟ゴブリンは


ゴエモンに見張っててもらう。


「コタロウ、フク、周囲を警戒だ」


たった3匹だけだったとはいえ、


俺の仲間は意外に強かったらしい。


「……頼もしい限りだな」


《主、水路から重い足音が!》


フクから慌てた念話がくる。


地下水路の奥から


重い音が響いた。


ドン……。


ドン……。


足音。


かなりデカイな。


ハークが振り向く。


「……来る」


次の瞬間。


水面が大きく揺れた。


そして現れた。


巨大な影。


リザードマン。


大人の戦士だ。


濃い緑の鱗に覆われた体。


片手には簡易的だが槍が握られている。


鋭い爪。


大きな身体を支える長い尾。


そして——


爬虫類特有の黄色い目が、怒りをたたえている。


リザードマンは


倒れている洞窟ゴブリンを見た。


次に


自分の子供を見る。


そして


俺たちを。


「グルルル……」


殺気。


完全な戦闘態勢。


まぁ、ヒーローって感じは無いもんな。


俺たちゴブリンは。


……見た目だけなら。


皆が息を飲む。


ハークが拳を握る。


「主」


「やるか?」


ゴエモンも前に出る。


コタロウは影に回る。


だが——


イグニスは手を上げた。


「待て」


全員が止まる。


リザードマンとは、戦うべきじゃない。


今も、これからも…。


リザードマンは警戒したままだ。


イグニスはゆっくり歩く。


そして


子供リザードマンを指す。


「そいつ」


「助けた」


当然


言葉は通じない。


だが——


子供が鳴いた。


「キュゥ」


そして


イグニスの後ろに隠れる。


リザードマンは目を見開いた。


ビーグルが尻尾を振る。


「ワン」


まるで「助けたぞ」と言わんばかりだ。


リザードマンは


ゆっくり近づく。


緊張が走る。


だが


子供は走った。


そして


リザードマンに抱きつく。


「キュゥ!」


リザードマンの殺気が


少しだけ消えた。


良かった。


ナイスだ、チビリザードマン。


ハークが呟く。


「……通じた?」


イグニスは肩をすくめる。


「多分な」


リザードマンは


洞窟ゴブリンを見る。


そして


イグニスを見る。


しばらくの沈黙。


やがて——


武器を下ろした。


敵意が消える。


アンが小さく言う。


「交渉成立です」


イグニスは笑った。


「隣人になれそうだな」


地下水路の水音が


静かに響く。


この出会いが


後に——


魔王軍とリザードマン族の


最初の同盟になる。




読んでいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけたら

ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


次回もよろしくお願いします!

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