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第2話 君、ビーグルね

森は静かだった。


湿った土の感触。


鬱蒼とした森。


風に揺れる木々。


空を覆うほどの高さ。


やはりここは……


俺のいた世界じゃない。


そして。


「キャン……!」


小さな悲鳴。


俺は足を止めた。


「……?」


耳を澄ます。


また聞こえた。


「キャンッ!」


子犬のような声だ。


「魔物か」


俺はゆっくりと茂みに近づく。


葉をかき分けた瞬間。


そこにいたのは——


ゴブリンだった。


五体。


粗末な棍棒を持っている。


まあ、森の中だしな。


そして、その中央に。


小さな魔物がいた。


コボルトの幼体。


犬のような耳。


震える身体。


ゴブリンたちがそれを囲んでいた。


「グギャギャ!」


棍棒を振り上げる。


(あー)


俺は頭をかいた。


「食う気か」


コボルトの幼体は


必死に後ずさる。


「キャン……!」


俺は一歩前に出た。


そんな悲しい声で泣かれたら、


助けるしかないだろ。


「おい」


当然、通じない。


一体のゴブリンが


俺を見て叫ぶ。


「ギャッ!」


次の瞬間。


突っ込んできた。


「しょうがないな」


俺は軽く避ける。


そのまま腹に拳を叩き込む。


「グェッ!?」


ゴブリンが吹き飛んだ。


今回は手加減できた…か?


残りの四体が固まる。


「……」


「グギ……?」


だが、すぐに全員で襲ってきた。


「はいはい」


俺は肩を回す。


所詮は最弱のゴブリンだ。


……あ、俺もか。


「かかってこい」


――数分後。


「グ……」


ゴブリンたちは


全員地面に転がっていた。


死んではいない。


ただ完全に伸びている。


この短期間でよく手加減できたな俺。


「……弱いな」


その時、足に何かがしがみついた。


「?」


見下ろす。


さっきのコボルトの幼体だった。


尻尾をぶんぶん振っている。


「キャン!」


「……」


俺はしゃがみ込む。


よく見ると


ビーグル犬みたいな顔をしている。


「……お前」


「ビーグルだな」


その瞬間。


頭の奥で声が響いた。


《絆スキル発動》


《対象:ビーグル》


光が俺とコボルトを包む。


「……おいおい」


「そんな簡単に仲間になるのか」


ビーグルは


嬉しそうに尻尾を振る。


「ワン!」


その時。


背後から声。


「ギ……」


振り向く。


ゴブリンたちが


ゆっくり起き上がっていた。


棍棒を構えている。


だが


その手は震えていた。


俺は立ち上がる。


「殺すのは簡単だ」


ゴブリンたちが凍りつく。


よく見れば、一人で立てないやつもいる。


「でも」


「それじゃつまらない」


俺は指を差した。


「俺の仲間になれ」


沈黙。


ゴブリンたちは


互いの顔を見る。


そして。


一番小柄なゴブリンが


ゆっくり頭を下げた。


「……」


残りの四体も続く。


俺は笑った。


「よし」


「決まりだ」


俺は順番に見ていく。


「お前」


小柄なゴブリン。


「コタロウ」


次。


大きいゴブリン。


「ゴエモン」


次。


腕の太いゴブリン。


「ハーク」


次。


耳の長いメスゴブリン。


「フク」


最後。


賢そうな目をしたゴブリン。


「アン」


その瞬間。


空気が震えた。


《名付けを確認》


《絆スキル発動》


光が広がる。


俺の目の前に


文字が浮かんだ。



【ステータス】


名前

イグニス


種族

ゴブリン


称号

世界樹の加護


固有スキル

聖魔王(封印)

パッシブのみ使用可能


特別スキル



「……ステータス?」


俺は驚く。


そして


仲間を見る。



コタロウ

固有スキル:忍足


ゴエモン

固有スキル:硬化


ハーク

固有スキル:腕力強化


フク

固有スキル:千里耳


アン

固有スキル:賢者



その時だった。


アンがゆっくり顔を上げた。


「……主」


俺は目を瞬かせる。


「え?」


さっきより饒舌だ。


「理解しました」


アンは言う。


「主は」


一瞬の間。


「魔王です」


俺は思わず笑った。


「いや」


「まだ違う」


俺は森を見る。


広い世界。


強い魔物。


人間。


神。


「でも」


「その予定だ」


ビーグルが吠える。


「ワン!」


小さな群れ。


だが――


この瞬間。


最弱ゴブリンの軍団は生まれた。


そしてこの群れは、やがて


世界を揺るがす魔王軍になる。



読んでいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけたら

ブックマークや評価をいただけると嬉しいです。


次回もよろしくお願いします!

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