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突然、異世界に迷い込んだアラフォーパパ。帰れないから冒険者やって、焼肉屋はじめました  作者: きりざく


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第5話−2 翌朝、Gランクの意地



 朝の光が、宿の廊下に細く入ってくる。


 ヨーヘイは薄い毛布を畳んで端に置き、腰帯に短剣を通した。ぴったりとはまる。昨夜で三回目だから、もう迷わない。


ヨーヘイ:(今日、2枚返せる)


 それだけが頭にある。銅貨3枚。足りない。2体以上倒せれば、なんとかなる。


 階段を下りながら、昨夜のサーラの顔を思い出した。「変な人だね」。悪い意味ではなかった。たぶん。


 炊事場の前を通り過ぎる。もう誰もいない。焦げと脂の匂いだけが、まだわずかに残っている。





 ギルドの掲示板は、朝から混んでいた。


 ヨーヘイが近づくと、冒険者が2人、依頼用紙を眺めながら何か話している。声が届く。


冒険者A(若い男):「ガリアントが北東の林道に出てるって、ほんとか?」


冒険者B(がっしりした男):「昨日うちの班が見た。5、6体の群れだったって言ってたぞ」


冒険者A(若い男):「面倒くさいな。正面から行くと囲まれるし」


 2人は別の依頼用紙を取って離れた。


 ヨーヘイは掲示板の前に立った。ホーンラビット討伐の依頼用紙を確認する。報酬は1体につき魔石と素材の買取がギルド保証。昨日と同じ条件だ。


 さっきの会話が頭に引っかかっている。


ヨーヘイ:「ガリアント……」


 思わず声に出た。


解析の声:「登録済みの魔物です。グレードはGです。群れで行動する習性があります」


ヨーヘイ:「Gか。ホーンラビットと同じグレードか」


 でも群れる、という部分が引っかかっている。


ヨーヘイ:「……群れって、何体くらい」


解析の声:「目撃情報では5〜8体が標準です」


ヨーヘイ:「……多いな」


 しばらく掲示板を見ていると、受付の方から声がかかった。


ミナ(受付):「おはようございます。今日も討伐ですか?」


ヨーヘイ:「おはようございます。ホーンラビットを狙おうかと思って」


ミナ(受付):「昨日の場所と同じ方向で大丈夫です。あ、一つだけ」


 ミナが少し声を落とした。


ミナ(受付):「北東の林道、昨日から群れの目撃が出てます。ガリアントです。ホーンラビットのいる草地よりは奥になりますが、近くを通るなら一応」


ヨーヘイ:「さっき他の人も言ってました」


ミナ(受付):「Gグレードなので危険度は低いんですが、群れると面倒で。初めて当たりそうなら声かけてください。コツがあるので」


ヨーヘイ:「分かりました」


 ミナが付け加えた。


ミナ(受付):「外殻が素材になるので、倒せたら持ち帰ってください。加工業者が引き取ります」


 ヨーヘイは軽く頷いて、ギルドを出た。





 草地は朝露が残っていて、足元が湿っている。


 ヨーヘイは短剣を腰に下げたまま、ゆっくり歩いた。昨日と同じ感覚を確かめながら進む。草の高さ、風の向き、遠くの木立。


解析の声:「右前方に反応があります。2体。動きは遅いです」


 ヨーヘイは立ち止まった。草の向こうに、小さな影が2つ。ホーンラビットだ。


ヨーヘイ:「助かります。他に反応は?」


解析の声:「今のところ、この2体だけです」


ヨーヘイ:「了解。じゃあ、昨日と同じ手順で」


 石を1つ拾って、左に投げた。


 音がした方向に2体が向く。その隙に右から距離を詰める。最初の1体は短剣の横薙ぎで転ばせてから、首の付け根。2体目が振り返る前に、同じ動き。


 地面に2体、並んでいる。


ヨーヘイ:「……昨日より速かったな」


 口に出してから、少し笑えた。同じ手順なのに、体が先に動いていた。迷いが減っている。


 魔石を2つ、手のひらに乗せた。G(小)が2つ。地味だが確かだ。


ヨーヘイ:(2体倒した。もう帰ってもいい)


 G魔石2つで19枚。手持ち3枚と合わせれば22枚。サーラへの2枚は返せる。最低限の目標は達成した。


 でも、22枚。宿代が30枚。今夜の宿が払えない。


ヨーヘイ:「……全然足りないな」


 声に出てから、改めて現実が見えた。2体では今夜の寝床すら怪しい。もう一回り、最低でも同じくらい稼がないとまずい。


 立ち上がりながら、北東の木立を見た。林道の入口が、そこから少し先にある。


 移動しながら、ふと足元の草に目が止まった。葉の形に見覚えがある。採取へらを使うようになってから、植物への目が少し変わった。


ヨーヘイ:「解析さん、これ……カイフクソウですか」


解析の声:「はい。カイフクソウです。縁の刻みと粘りで確認できます」


ヨーヘイ:「やっぱり。葉の形、先週と同じだった」


 見本帳で覚えた特徴が、ちゃんと手元に残っている。知識が体に入ってきている感じがした。


ヨーヘイ:「束で持ち込むと単価上がるんでしたっけ」


解析の声:「はい。3束で銅貨6枚前後です」


ヨーヘイ:「……もらっておこう。地味だけど確かだ」


 採取へらを出して、根を傷つけないように丁寧に掘る。同じ株が草地の端にまとまって生えていた。3束分、手際よく袋に入れた。手を動かしながら、採取スキルが少し育つ感覚がある。数字ではなく、指先の感覚として。


ヨーヘイ:「この辺、他に換金できるものはありますか」


解析の声:「現在、周囲に換金対象植物はカイフクソウのみです」


ヨーヘイ:「了解。十分です」


 さっきのガリアントの話が頭に引っかかっていた。ミナが「外殻は加工業者が引き取ります」と言っていた。魔石だけじゃなく外殻も換金できる。群れが5体いれば、一気に稼げる計算になる。


ヨーヘイ:「……行くか」


 自分に言い聞かせるように、声に出した。


ヨーヘイ:「解析さん、北東の方向、今何体いますか」


解析の声:「北東に複数の反応があります。現在、6体。動きはゆっくりです」


ヨーヘイ:「6体か……。やっぱりいるな」


 向かう前に、一つ確認しておきたいことがあった。


ヨーヘイ:「解析さん、周囲に他の反応はありますか。ガリアントと戦ってる間に別のモンスターが来たら困るので」


解析の声:「現在、周囲50メートル以内に他の反応はありません。北東の6体のみです」


ヨーヘイ:「……よし。それなら行けそうだ」


ヨーヘイ:「解析さん、ガリアントの魔石って、ホーンラビットと同じGグレードですか」


解析の声:「はい。魔石の基準グレードはGです。加えて外殻が素材として換金対象になります」


ヨーヘイ:「外殻は1個いくらくらいになりますか」


解析の声:「加工業者向けで銅貨3〜5枚程度です。5体以上のまとめ売りで単価が上がる場合があります」


ヨーヘイ:「……6体いるなら、魔石だけで60枚近い。外殻込みだと80枚以上になる計算か」


 口の中で数字を転がした。今夜の宿代30枚、サーラへの2枚、それを引いてもまだ残る。


ヨーヘイ:「リスクはあるけど、コツさえ分かれば行けそうだな。さっき聞いた話だと、正面から行かなければいい」


 ヨーヘイは草地と林道の境目に立った。木立の影が地面に伸びている。少し風がある。


ヨーヘイ:「正面から行くと囲まれる、ってさっきの人が言ってたな。解析さん、弱点とか分かりますか」


解析の声:「外殻が硬いため、刺突は通りにくいです。首の付け根と脚の継ぎ目が弱点です」


ヨーヘイ:「なるほど。突くんじゃなくて、切り込む感じか」


 林道の手前に、斜めに倒れた太い木の根があった。根の反対側に回り込めば、正面から来る数を絞れる。


ヨーヘイ:「あの根、使えないかな。あそこに誘導したら1体ずつ相手にできません?」


解析の声:「地形を利用すれば有効です。根の右側は塞がれているため、来る方向を絞れます」


ヨーヘイ:「よし。じゃあそこまで誘導する」


 小石を林道の中に投げた。


 音に反応して、茂みの影から動くものが出てくる。黒っぽい外殻。六本脚。体長30センチほど。見た目はアリをそのまま大きくした感じだ。


ヨーヘイ:「……でかっ。これがガリアントか」


 思っていたより大きい。アリを30センチにしたような外殻。六本脚。動きは遅いが、数がある。


 3体が音の方向を向いた。残り3体はまだ茂みの中だ。ヨーヘイは倒木の根の陰に移動した。右側は根がふさいでいる。来るとしたら左正面からだ。


 先頭の1体が根に近づいてくる。


 ヨーヘイは半歩踏み込んで、首の付け根を横から打った。外殻の端が短剣に当たる感触がある。硬い。でも角度が合えば入る。


 1体目、倒れた。


 2体目が来る。今度は少し待って、脚の付け根を狙った。同じ感触。同じ結果。


ヨーヘイ:「いける。解析さん、残りは」


解析の声:「残り3体。茂みの中に2体、根の手前に1体が来ています」


ヨーヘイ:「1体ずつ来るなら問題ない」


 そこで後ろの茂みからさらに動く気配がした。


解析の声:「左後方から2体、接近しています。迂回してきました」


ヨーヘイ:「回り込まれた……! 左後方、何メートルくらい」


解析の声:「およそ5メートルです。急いでください」


 振り返る。確かに2体が別のルートで近づいてくる。


 ヨーヘイは倒木の根から離れた。開けた場所に出る。右に1体、左後方に2体。


ヨーヘイ:「……3対1か。まずいな」


解析の声:「1体ずつ引き離してください。同時に相手をする必要はありません」


ヨーヘイ:「そうだ。落ち着け。1体ずつ、1体ずつ」


 右の1体に向かって踏み込んだ。外殻の継ぎ目を打つ。倒れる。


 振り返って、2体が来る前に少し距離を開ける。1体が先行してくる。それだけを見た。


 継ぎ目を打つ。倒れる。


 残り1体。


 ヨーヘイはゆっくり構えた。足元が少し疲れている。息が上がっている。でも最後の1体だ。


 最後の1体が正面から来た。


 ヨーヘイが踏み込んだ瞬間、脚が滑った。右足が木の根に引っかかる。バランスが崩れる。


 外殻の端が、左腕をかすった。


ヨーヘイ:「いたっ……!」


 それでも体勢を整えて、首の付け根を打った。最後の1体が倒れた。


 左腕を見る。袖が少し破れている。腕の表面に赤い線が走っている。深くはない。でも、じわじわと熱い。


ヨーヘイ:「やっちまった……。解析さん、これ、深い?」


解析の声:「傷は浅いです。ただし止血を推奨します。そのままにしないでください」


ヨーヘイ:「分かった。布持ってる」


 ヨーヘイは荷物から布切れを取り出して、腕に巻いた。


ヨーヘイ:「ポーション……買っとけばよかった」


 声に出してから、苦笑した。


ヨーヘイ:「買える金、なかったんだけどな。今日までは」


 倒れた6体を見渡した。外殻が、地面に散らばっている。ミナが言っていた。外殻は素材になると。


 袋に拾い始めながら、腕の痛みを確かめた。動く。問題ない。でも、甘く見ていた部分があった。


解析の声:「6体、討伐確認済みです」


ヨーヘイ:「……食えるんですか、これ」


解析の声:「食用には適していません」


ヨーヘイ:「食えないのかよ……。外殻だけか」


 ため息をついてから、袋に詰め続けた。まあそういうこともある。





 草地から戻る途中、不意に頭の中に音が鳴った。


 ゲームでよく聞いた、あの音に似ている。


ヨーヘイ:「……あ」


 足が止まった。


 目の裏に、文字が浮いた。


ヨーヘイ:「これ……レベルアップ?」


 思わず声に出た。周りに誰もいないのが幸いだ。


 意識の中に画面が展開していく。昨日より広い。項目が多い。


────────────────────

ヨーヘイ・レン

Lv 1 → 2  ★LEVEL UP!

────────────────────

HP  85 → 102 (+17)  全快

MP  40 → 46 (+6)  全快

────────────────────

ちから    68 → 73 (+5)  D

たいりょく  62 → 68 (+6)  D

すばやさ   71 → 76 (+5)  D

きようさ   74 → 78 (+4)  D

かしこさ   95 → 98 (+3)  C

ちょっかん  79 → 83 (+4)  C ★NEW

うん     88 → 91 (+3)  C

────────────────────

スキル熟練度

《解析》Lv1 36/100

《収納》Lv1 11/100

《採取》Lv1 15/100

《解体》Lv1  5/100

《料理》Lv1  1/100

────────────────────


ヨーヘイ:「……前より項目が増えてる。なんで」


解析の声:「レベルアップに伴い、表示項目が拡張されました」


ヨーヘイ:「ちょっかんがDからCになってる。あと……かしこさが95って、突出しすぎじゃないですか」


解析の声:「……」


ヨーヘイ:「聞いてますよね」


解析の声:「お答えできる範囲ではありません」


ヨーヘイ:「それはそれで気になるな。……あ、でも待って。なんで今?」


 画面を眺めながら、声に出た疑問だった。最後のガリアントを倒したのは数分前だ。なぜそこじゃなく、歩き出してから鳴る。


ヨーヘイ:「解析さん、レベルって倒した瞬間に上がるんじゃないんですか」


解析の声:「経験値は行動の積み重ねで蓄積されます。討伐、解体、採取、スキルの使用、すべてが対象です。一定値を超えた瞬間に発動します」


ヨーヘイ:「……なるほど。戦闘だけじゃないのか」


解析の声:「はい。今回は討伐に加え、解体と採取の作業が積み重なったことで閾値を超えました」


ヨーヘイ:「じゃあ聞きますけど、各行動でどれくらい経験値が入るんですか。数字で出ませんか」


解析の声:「表示可能です。魔物討伐はグレードに応じて変動します。Gグレードで40〜80程度。解体・採取は1回あたり20〜50。スキル使用は5〜15程度です」


ヨーヘイ:「……へえ。意外と解体や採取も大きいな」


解析の声:「戦闘だけが成長の手段ではありません」


ヨーヘイ:「じゃあ次のレベルまであと何ポイント必要か分かりますか」


解析の声:「Lv2→3の必要累計は500です。現在の取得累計との差分は表示できます」


ヨーヘイ:「表示してください」


解析の声:「現在の累計経験値は224です。次のレベルアップまで276必要です」


ヨーヘイ:「……今日の稼ぎが大体200くらいか。あと2日、同じペースで動けばLv3になれる計算だな」


 頭の中で組み立てが始まる。Lv3になれば能力値がまた上がる。Gランクの敵がもっと楽になれば、1日の討伐数を増やせる。そうすればFランクにも手が届いてくる。


ヨーヘイ:「強くなれば、もっと強い敵と戦えるんですよね。Fとか、Eとか」


解析の声:「順当に成長すれば、可能です」


ヨーヘイ:「……やる気出てきた」


 声に出てから、自分でも少し笑えた。異世界に飛ばされた44歳が、草地の真ん中でレベル計算をしている。


 そのとき、腕の痛みが引いていった。


 じわじわしていた熱が、すっと消える。腕に巻いた布をそっとずらすと、赤い線がもう塞がっている。


ヨーヘイ:「……治った」


解析の声:「レベルアップ時にHPが全快します。軽傷であれば同時に回復します」


ヨーヘイ:「そういう仕組みか。……それも含めて、ちゃんと設計されてるんだな」


 草の上に立ったまま、ヨーヘイはしばらく動かなかった。


 体が軽い。


 それは昨日も一昨日も感じていたことだが、今日は少し違う。痛かったものが消えた、という「前後」がある。


ヨーヘイ:「……異世界に来てから、ずっと体の調子がいいな」


 独り言のつもりが、少し大きく出た。


 ここ数年の現代での話を思い出した。階段を上ると動悸がした。重い荷物を持つと肩が一晩痛かった。美咲に「無理しないで」と言われるたびに、うまく返せなかった。無理じゃないと言いたかった。でも体が言わせてくれなかった。


 それが今、魔物と戦って、腕の傷が治って、まだ立っている。


ヨーヘイ:(……帰ったら)


 草地の向こうに、村の屋根が見える。煙が細く上がっている。朝の、普通の煙だ。


ヨーヘイ:(美咲に、心配させない夫になれるかもしれない)


 それだけ思って、歩き出した。





 ギルドに戻ると、ミナが書類を整理していた。ヨーヘイが袋を窓口に置くと、目が少し丸くなった。


ミナ(受付):「ガリアント……6体?」


ヨーヘイ:「出くわしたので」


ミナ(受付):「初めてですよね、ガリアント」


ヨーヘイ:「はい。倒木の根を使って1体ずつに絞りました」


 ミナが少し間を置いた。


ミナ(受付):「……それ、ベテランでもやらない人いますよ。正面からゴリ押しする人が多いので」


 褒めてくれているのか確認する気力がなかった。腕の傷はLvアップで塞がったが、一回引っ掻かれたのはヨーヘイだけが知っている。


ヨーヘイ:「3体目で足が滑って、引っ掻かれました。レベルが上がって治りましたが」


ミナ(受付):「レベルが上がったんですか。おめでとうございます」


 笑顔だった。事務的ではない、本人が嬉しそうな笑顔だった。


ミナ(受付):「外殻の買取は加工業者への引き渡しになるので、今日の分は明日のお渡しになります。よろしいですか」


ヨーヘイ:「問題ありません」


 査定が始まった。


ミナ(受付):「ホーンラビットG魔石×2で19枚、骨・角で9枚。ガリアントG魔石×5で48枚。カイフクソウ3束で6枚です。合計82枚になります」


ヨーヘイ:(82枚。それと手持ち3枚。合計85枚)


ミナ(受付):「お受け取りはいかがしますか?」


ヨーヘイ:「銅貨でお願いします」


 銅貨85枚が、窓口に並んだ。重さが手のひらに乗る。昨日の3枚とは全然違う重さだ。


ヨーヘイ:(……生きてる)


 ギルドを出て、宿に向かった。


 サーラは厨房にいた。仕込みの途中で、ヨーヘイを見て手を止めた。


ヨーヘイ:「昨日の2枚、お返しします」


 銅貨2枚を差し出した。


 サーラは受け取って、手のひらで確かめるように見た。


サーラ(女将):「……早かったね」


ヨーヘイ:「言ったので」


 サーラがもう一度だけヨーヘイを見て、また仕込みに戻る。包丁の音が再び始まった。


 それでよかった。





 部屋に戻って、宿代の30枚を財布にしまった。残りは53枚。


 窓から村の通りが見える。昨日まで銅貨3枚だったのに、今日は53枚ある。


ヨーヘイ:(少し、余裕ができた)


 腕を持ち上げて確かめた。何もなかったように塞がっている。引っ掻かれた感覚はあったのに、皮膚に痕が残っていない。


 明日、外殻の買取18枚が入る。合計71枚になる。ポーションが銅貨30枚だとすれば、1本は買える。


ヨーヘイ:(次からは先に買っておく)


 今日の失敗は、正直な失敗だった。足が滑ったのは疲れと油断で、準備が足りなかった。でも6体を一人で片付けた。


 解析の声が、戦闘中に必要なことだけ言ってくれた。位置、弱点、引き離すタイミング。言葉は少ないが、当たっていた。


ヨーヘイ:「……解析さん、地味に頼りになるな」


解析の声:「業務の範囲内です」


ヨーヘイ:「そればっかりだな」


 窓の外、村の煙が夕方の角度に変わっている。今日はもう終わりでいい。


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【第5話後半 リザルト&ステータス】

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▼ ヨーヘイのステータス(第5話後半終了時点)

Lv:2 HP:102/102(全快) MP:46/46(全快)


能力値:

・ちから   68 → 73(+5) D

・たいりょく 62 → 68(+6) D

・すばやさ  71 → 76(+5) D

・きようさ  74 → 78(+4) D

・かしこさ  95 → 98(+3) C

・ちょっかん 79 → 83(+4) C ★NEW

・うん    88 → 91(+3) C


スキル熟練度:

・《解析》Lv1 熟練度 36/100

・《収納》Lv1 熟練度 11/100

・《採取》Lv1 熟練度 15/100

・《解体》Lv1 熟練度 5/100

・《料理》Lv1 熟練度 1/100


▼ 討伐記録

ホーンラビット(G)×2 ドロップ:G魔石×2・骨角×2・後脚肉×2(持ち帰り)

ガリアント(G) ×5 ドロップ:G魔石×5・外殻×5(明日買取予定)

※ヨーヘイ、ガリアント戦で左腕に軽傷→Lvアップ全快


▼ 換金・収支

換金合計:82枚(G魔石合計67・骨角9・カイフクソウ6)

手持ち3枚との合計:85枚

サーラへ精算:-2枚

宿代:-30枚

手残り:53枚

明日受け取り予定(外殻×5):18枚


▼ インベントリ残留

・採取へら×1

・シーオの実(残量) 布包み

・短剣×1

・冒険者証(Gランク・探索者)

・ホーンラビット後脚肉×2(鮮度保持中)


▼ ヨーヘイの考察

 解析さん、今日の報告です。


 ガリアントというのを初めて倒しました。6体です。外殻が硬くて突くより切り込む感じの方が通りました。倒木の根を使って1体ずつに絞ったのは正解でした。ただ4体目で足が滑って引っ掻かれました。油断というより疲れです。次は途中で一回呼吸を整えます。


 レベルが2になりました。画面の項目が増えましたね。ちょっかんがCになりました。かしこさが95というのは……正直驚いています。現代知識の影響ですかね。解析さんの精度が良いのもそこと関係がありますか。今度教えてください。きっと「業務の範囲内」って言うんでしょうけど。


 Lvアップで傷が治りました。これは大きい。ポーションを事前に買えない序盤の生命線になります。次は外殻18枚が入ったらポーションを1本だけ先に買います。


 美咲のことを少し考えました。それだけです。

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