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イミテーション・レイン  作者: 彼方夢


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2/12

雨乞い

 帰宅すると真っ先に傘を折りたたみ、それからブレザーを脱ぐ。そして洗面台で手を洗った。

 冷蔵庫の中から夕食の具材を取り出す。

「お兄ちゃん。今日の晩ごはんはなに?」

 三才の、くまのプーさんのフードを被っている妹。名前は歩美。右手にはかじったクッキーが握られている。

「今日の晩ごはんはカレーな」

「やったー!」

 妹が変な踊りをする。

「歩美。将来はアイドルになれるかもな」

 おっと、これではシスコンだ。

 切り分けた具材をコトコト煮詰めて数時間。次にカレールーのたねを鍋に投入しまた一時間。

 それから出来上がったカレー。歩美にはミッフィーの食器にやわらかめに炊いたご飯と甘口カレーをよそう。

 そうしたあと、コップにコトコトと梅サイダーを注ぐ。


「お兄ちゃん、今日も雨だね」

「うん……」

 窓の外を見ると雷雨が響いていた。


□■□


 深夜一時。俺は静かに食器の後片付けを行っていると、玄関の扉の開く音がした。

「ただいまぁ」

 ホスト帰りの毒親の帰宅だ。俺は小さく舌打ちする。

「なぁ、ほんといい加減にしてくれよ」

「あれ? 雷ちゃん怒ってる?」

 四十代にもなって人生を舐め腐っている母親に対して、息子が怒ってくれるだけマシだろ。

 そんな怒りをおくびに出さす、代わりに酔い冷ましの梅サイダーを出してやる。すると母の顔が険しくなった。

 どうしてそんな変な顔をするんだ?

「また天音の家に行ったの?」

「ああ。良くしてくれるから」

「あのショタコン……」

 天音、とは錦糸町に住むキャバ嬢のことだ。キャバ嬢、と言っても梅サイダーを手作りできるほど家庭的ではある不思議な女性ではあるが。

「もう、天音の家に行ったら駄目だよ。分かった?」

 何だよ。それ。身勝手にも程があるだろ。

 その言葉を無視して、また俺は食器洗いに戻った。

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