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彼女の選んだ世界  作者: taka
第28章  道を選ぶ者たち
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――山道に立つ人

 白い光が、二人の足元を包み込んだ。


 ヒカリとかなでは同時に変身を終え、夜明け前の山道を駆けていた。

 森は息を潜めたように静まり返り、冷えた空気が肺の奥まで染み込む。吐く息は白く、足音だけがやけに大きく響いた。


 世界樹への入口。

 その存在を、ヒカリはもはや“予感”ではなく、確信として感じ取っていた。


 ――急がなきゃ。


 だが、ヒカリはふいに足を止めた。


 山道の先。

 薄暗い木立の間に、ひとりの人影が立っている。


 「……おばあ、ちゃん……?」


 そこにいたのは、着物姿の祖母だった。

 逃げる様子も、驚いた気配もない。ただ、最初からここで待っていたかのように、静かに立っている。


 「行くのね?」


 短い問い。

 だがその声には、すべてを察した者の静かな覚悟があった。


 ヒカリは一瞬、唇を噛みしめ――そして、はっきりと頷いた。


 「……うん」


 祖母は目を伏せ、わずかに寂しそうな、それでいて誇らしげな微笑みを浮かべた。


 「そう……なら、生きて帰ることを最優先に考えなさい」


 静かな言葉だった。

 だが、それは命令よりも重かった。


 「あなたたちには未来があるの。

 ……私たちの時代のように、私以外全滅、なんてことを二度と起こしてはいけない」


 ヒカリの胸が、きゅっと締めつけられる。


 だからこそ、彼女は明るく言った。


 「行ってきます!」


 逃げないために。

 立ち止まらないために。


 祖母はゆっくりと頷き、今度はかなでの方へ視線を向けた。


 「……あなたは、ヒカリのお友達なのね」


 「は、はい!」


 かなでは反射的に背筋を伸ばす。


 「この子のことを、お願いします。

 ……そして、あなた自身の命も、大切に」


 そう言って、祖母は美しい所作で深く頭を下げた。


 「えっ、あ、あの……っ」


 「行こう、かなでちゃん!」


 ヒカリが声をかける。


 二人は再び走り出した。

 背中に、祖母の視線を感じながら。


 大切なものを守るために。

 そして――生きて帰るために。

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