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始動
その頃、ヒカリは街を歩いていた。
向かう先は病院。
雪代かなでと、夜凪ほのかの見舞いだ。
父を失ったほのかは、
まだ立ち上がれずにいる。
かなでもまた、
戦いと契約の断絶で心身を消耗していた。
「……大丈夫かな」
胸元のネックレスが、微かに脈打つ。
病室の窓から差し込む光は、穏やかだった。
世界が壊れ始めているなど、
ここではまだ感じられない。
ヒカリは、ドアノブに手をかける。
その瞬間――
地面が、揺れた。
遠くで、低く、重い音。
冷たい風が廊下を抜けていく。
ヒカリは、はっきりと理解した。
――もう、始まっている。
誰も引き返せない場所で、
最後の戦いが、動き出したのだと。




