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引き返せぬ者たち
次元城。
ジェイドは淡々と状況を整理していた。
「一般兵、残存百」
「補給、最低限」
「撤退路なし」
それでも、声は揺れない。
「――出撃準備を完了せよ」
命令は静かに下された。
アトラもまた、鎧を身に着けていた。
少年の身体に、重い装備がのしかかる。
帰還できないことは理解している。
それでも、立たねばならなかった。
脳裏に浮かぶのは、
夕暮れの街で微笑んだ少女の顔。
(……もう一度、会えたなら)
願いは、胸の奥へ沈めた。
ジェイドが一歩下がり、頭を垂れる。
「陛下。
これは、我らが選び続けた道の、最果てです」
アトラは短く頷く。
「行こう、ジェイド。
守るために」
一方、妖精側も追い詰められていた。
強化を施した魔法少女たちは、
時間差で崩壊を始めている。
肉体が耐えられない。
精神が持たない。
戦闘可能なのは、もはや三十名ほど。
世界中から集めて、これだけ。
それでも、退く選択肢はない。
近衛妖精、三名。
上級妖精騎士、五名。
妖精騎士、十五名。
この世界に来ている、全戦力。
「今を逃せば、すべてが終わる」
誰も、異を唱えなかった。




