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彼女の選んだ世界  作者: taka
第25章 失われゆく世界の名
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侵食

 その時だった。


 回廊の奥から、慌ただしい足音が駆け込んでくる。

 鎧の擦れる音。荒い呼吸。


 「陛下!!」


 若い兵士が膝をつき、声を震わせた。


 「母国にて……

 無の侵食が、急激に進行しています!」


 空気が凍りつく。


 アトラは即座に踵を返した。

 「通信室へ!」


 転送魔法が起動し、空間に光の幕が展開される。


 映し出されたのは――

 もはや戦場と呼ぶことすらできない光景だった。


 色が、失われている。

 白でも黒でもない、“存在しない色”。


 音がない。

 叫びも、爆発も、風の音すら存在しない。


 人々は動かない。

 いや――動いた形跡だけが、そこに残されていた。


 時間そのものが、削り取られていた。


 「……ここまで、来たか」


 アトラの声は、低く震えた。


 映像の端で、無は確実に居城へと迫っている。

 もはや、猶予はない。


 ジェイドは即座に命じた。


 「残存騎士団に通達!」

 「姫殿下を最優先で脱出させよ!」


 『畏まりました。。準備は進行中です』


 返答は即座だった。

 ――だが。


 画面の片隅に、ひとつの影が映る。


 白い衣を纏った、小さな少女。

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