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偶然という名の出会い
夕焼けの町、何時もの日常そんな中を歩いている。急な人影に驚きバランスを崩す。
転びかけた、その瞬間だった。
視界が揺れ、思わず目を閉じたヒカリの身体を、
誰かの腕が、静かに、しかし確かに受け止めた。
「……大丈夫?」
低く、落ち着いた声。
顔を上げると、金色の髪と碧い瞳の少年が、
少しだけ驚いたようにこちらを見ていた。
「あ、すみません……ありがとうございます」
慌てて身体を離し、頭を下げる。
少年は小さく首を振った。
「気にしないで。こちらこそ、急に前に出てしまった」
一拍置いて、彼は柔らかく微笑んだ。
「アルス。そう呼んでくれればいい」
「私は……ヒカリです。立花ヒカリ」
名乗ると、アルスは何かを確かめるように、静かに頷いた。
「それなら、お礼ついでに……街を案内してくれないか?」
意外な申し出だった。
「観光地じゃなくていい。
人が“生きている場所”を、見てみたいんだ」
その声音に、作り物の軽さはなかった。
ヒカリは少し迷い、それから小さく笑う。
「……それでお礼になるなら」
こうして、二人は並んで歩き出した。




