妖精のニュース
放課後の教室。
机の上には、帰り支度を終えた鞄が並んでいる。
かなではスマホを覗き込みながら、ヒカリを手招きした。
「ねぇ、これ見て」
画面に並ぶニュースの見出し。
〈謎の“妖精”が目撃される〉
〈新たな魔法少女誕生か?〉
「妖精……?」
「うん。動画もあるよ」
タップされた映像には、夜の街角が映っていた。
暗闇の中に、淡い光がひとつ、ふたつ。
蛍のように揺れる、ピンクと金の粒子。
「……きれい」
「本当に、絵本みたいだよね」
ヒカリは画面をじっと見つめる。
光の中で、誰かが立ち上がる気配。
制服姿の少女と、そのそばに寄り添う小さな光。
映像はそこで途切れた。
コメント欄が、勢いよく流れていく。
「フェイクだ」
「本物だろ」
「可愛い!」
かなでは少し考えるようにしてから、聞いた。
「ねぇヒカリちゃん。
もし本当に妖精がいたら……契約、したい?」
冗談みたいな口調。
でも、その奥に迷いがあった。
「……分からない」
ヒカリは正直に答えた。
「夢みたいだとは思うけど」
「うん……」
かなでは頷いた。
「でもさ。誰かを助けられるなら、信じてみたくならない?」
その言葉に、ヒカリは一瞬、返事を失う。
――大きな樹。
夢で見た、あの光景がよぎる。
けれど、ヒカリは首を振って笑った。
「ねぇ、明日駅前のカフェ行こうよ」
「行く! パンケーキ食べたい!」
二人の声が重なり、教室に春の光が満ちた。
その窓の外、
遠くの空を、淡い金色の光が一瞬だけ横切った。
誰も気づかず、
風だけが、その跡をなぞっていった。




