獅子、戦場に立つ
世界樹を巡る争いが、表向きには静まった頃。
だが戦場は、形を変えて燃え続けていた。
帝国の次元城周辺。
幾度も繰り返される、執拗な攻撃。
蒼の門で妖精が得た“武装”。
それは、過去の魔法少女たちが遺した武の集合体だった。
使うたびに少女たちの命を削りながらも、
確実に帝国の騎士たちを摩耗させていく、歪んだ力。
そして――
ついに、その名が告げられる。
「――獅子将軍レムル、出陣」
戦場に立つレムルの姿は、いつもと変わらなかった。
背筋を伸ばし、剣を握り、ただ前を見る。
「退路を確保しろ」
「騎士は下がれ。ここから先は、私が引き受ける」
命令は静かで、揺らぎがない。
誰一人として、異を唱える者はいなかった。
それが――
彼の背中だった。
武装は、圧倒的だった。
遠距離から放たれる光は、盾も陣形も意味を成さない。
だからこそ、レムルは走った。
正面から。
ただ一人で。
間合いを詰め、使わせない。
それが、残された唯一の解だった。
妖精が嗤う。
「無駄だ。何人で来ようと、結果は同じ――」
その言葉は、途中で途切れた。
レムルの身体に、魔法少女たちが縋りついていた。
操られ、駆り立てられた少女たち。
恐怖と混乱に満ちた目で、必死にしがみついてくる。
「……離れよ」
低く告げ、レムルは一人ずつ掴み、
できる限り衝撃を殺しながら、後方へと投げ飛ばす。
「な……!?」
妖精が声を上げた、その瞬間――
巨大な光が解き放たれる。
(ここが……我の、最後の奉公か)
覚悟は、すでに決まっていた。




