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引き受ける光、走り出す影
蒼の門の戦場は、まだ終わっていなかった。
壊れた地面、崩れた結界。
そこに群がるように、魔法少女たちが迫ってくる。
疲労も、恐怖も、もう彼女たちの判断を止めてはいなかった。
「……ほのか!」
ヒカリの声が飛ぶ。
振り向いたほのかの視界に映ったのは、なおも襲い来る魔法少女たちと、
その背後で淡く歪む空間だった。
「ここは……私が引き受ける」
ヒカリが一歩前に出る。
「お願い。早く戻って。
――お父さんのところに」
言葉を選ぶ余地はなかった。
それが“正しい”と、分かってしまったから。
ほのかは歯を食いしばり、踵を返す。
走る。
ただ、走る。
街の風景が流れていく。
見慣れた交差点、閉まった商店、信号の止まった道路。
父の喫茶店の前を通り過ぎる。
いつもなら、あの窓の向こうで手を振る姿があるはずなのに。
「……待ってて」
あの曲がり角を曲がれば、病院だ。
時間をずらすことは出来ない。
それでも、走るしかなかった。




