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巫女たちの目覚め
深き結界の奥。
時間そのものが沈黙する空間で、巫女たちは眠っていた。
だが、その静寂は一瞬で破られる。
世界樹の根が青白く光り、
一本の枝から、葉が一枚――金色に染まり、ふわりと舞い落ちた。
「……目覚めの刻が来ました」
最古の巫女が、ゆっくりと瞼を開く。
その瞳は、世界そのものを映すかのように深く、穏やかだった。
「世界が、己の“終わり”を理解したのです」
別の巫女が静かに頷く。
「ならば、次の命を紡がねばなりません」
世界樹の幹が低く鳴り、
淡い光が中央へと集束していく。
渦を巻いた光は、やがて――
透き通った果実の形を取り始めた。
――それは、世界の心臓。
命を継ぐために、樹が産み出す“実”。
果実が脈動するたび、空間が微かに震える。
新しい生命の予兆。
世界は、死ではなく――
“誕生”のために、静かに動き始めていた。




