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彼女の選んだ世界  作者: taka
第20章 世界樹の胎動
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報せ

 帝国・転移城。

 薄明の空を映す広間の床に、血に染まった封書が静かに置かれていた。


 それを見下ろす皇帝アトラの表情は、動かない。

 怒りも、悲しみも、ただ深く沈殿させたまま――どこか遠くを見ていた。


 「……グランが、命を賭して残した報告です」


 白髪の老将――ジェイド・マッカードが、沈痛な声で告げる。

 獅子将軍レムルは拳を握りしめ、言葉なく首を垂れた。


 封書の中には、乱れた筆跡で短い文が並んでいた。


 > 『青の門を発見。

 >  浮かぶ大地に巨木あり。

 >  白衣の少女たちが、祈る姿を見た。

 >  我らが探していた“それ”は、確かに存在する』


 最後の一行だけが滲み、読み取れない。

 赤い指跡が紙に残り、血はすでに乾いていた。


 アトラは、そっと黒い羽根を拾い上げる。


 「彼は最後まで、帝国のために剣を握っていたのだな」


 レムルが、わずかに唇を噛みしめながら頷いた。


 「……第十位の名を、誇りに変えた男でした」


 沈黙を破ったのはジェイドだった。


 「陛下。これは“扉”の存在を示す決定的証拠です。

  しかし――今動けば、妖精どもに察知されましょう」


 アトラは羽根から視線を外さず、低く応じる。


 「焦るな。……世界そのものが、すでに変わり始めている」


 その瞬間。

 羽根が淡く光を帯びた。


 広間の空気が、遠い何かと呼応するように震える。

 世界が――確かに、脈を打っていた。

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