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彼女の選んだ世界  作者: taka
第2章 妖精の囁き
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友達と春の空

昼休み。

窓を開けた教室に、春の風がすべり込んできた。

誰かが開けっぱなしにしたままの窓から、

校庭の匂いと、ほんのり甘い桜の香りが混じって流れ込む。


桜の花びらが一枚、ふわりと舞って、ヒカリの机の端に落ちた。


「ヒカリちゃん、今日のお弁当も卵焼きだね」


隣の席から、かなでが身を乗り出してくる。

笑うと少しだけ目尻が下がる、いつもの表情。


「うん。おばあちゃんの味が好きで」

「いいなあ。ヒカリちゃんのお弁当、なんか落ち着くんだよね」


かなではそう言って、自分のおにぎりを持ち上げた。

形は少し歪で、海苔も端がめくれている。


「……ちょっと焦げちゃったけど」

「でも、かなでちゃんらしいよ」

「それ、褒めてる?」


二人で小さく笑う。

特別な話題があるわけじゃない。

けれど、この時間が好きだった。


かなでは箸を止め、ふと窓の外を見た。


「ねぇ、ヒカリちゃん。昨日のニュース、見た?」

「見てないけど……また魔法少女?」

「うん。水の中から現れて、空を飛んだんだって」


その声には、はしゃぎすぎない、でも隠しきれない憧れが混じっていた。


「すごいよね。怖いはずなのに、ちゃんと前に出て……」

「……うん」

「誰かを守るって、簡単に言えないことだと思うんだ」


かなでの言葉は、静かだった。

目立ちたいとか、すごく見られたいとか、そういう響きはなかった。


ヒカリは思う。

――この子は、ほんとうに優しい。


「……でもさ」

かなでは少しだけ眉を下げた。

「“敵”とか“帝国”とか、よく分からないものも多いよね」


「怖いよ」

ヒカリは正直に言った。

「でも……みんなが頑張ってるから、きっと大丈夫って思いたい」


かなでは、安心したように笑った。


その笑顔を見ながら、

ヒカリは心の奥で、理由の分からない願いを抱いた。


――この時間が、ずっと続けばいい。


窓の外では、雲がゆっくりと流れていた。

何も起きない昼下がり。

それが当たり前だと、信じていられる時間だった。

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