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遺跡の底
同時刻、海底遺跡。
崩れかけた通路を、
グラン率いる帝国の調査班が慎重に進んでいた。
壁面に刻まれた古い文様。
白衣の巫女、光を抱く少女、
そして――世界を貫く流れの記録。
グランは足を止める。
「……祈りの痕跡、か」
「いや……違うな。これは――“管理”の記録だ」
その時。
別の通路で、影が音もなく滑った。
妖精国の上級騎士。
彼女が辿り着いた先に、
青白く輝く装置が鎮座していた。
金属と水晶で構成された中枢。
蔦の紋様。
中央に刻まれた古代文字。
> Arka Conducta ― 共鳴の導具
世界を守りしすべてを壊しうる物
女は、息を呑む。
「……伝承は、本当だったのね」
「世界の“心臓”……」
通信結晶が、低く鳴動する。
『使用を許可する』
『対象は守護者。全魔力を流せ』
一瞬だけ、指が止まる。
だが、次の瞬間――
彼女は、微笑んだ。
「これで……私たちは、“あの子”を超えられる」
指先が中枢に触れる。
装置が起動した。
鼓動。
海底全体が、
巨大な心臓のように、ゆっくりと脈打ち始める。
それが――
破滅への合図であることを、
まだ誰も知らなかった。




