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かなでとほのか 消えた妖精たち
街外れの高架下。
コンクリートの柱の間を、乾いた風が吹き抜け、埃が舞っていた。
車の音は遠く、ここだけが都市から切り離されたように静かだ。
かなでは通信石を握りしめ、何度目かの操作を試みた。
「……ヴォイド。聞こえる?
応答して……」
石は淡く光るだけで、返答はない。
沈黙が、重く空間に落ちる。
かなでは視線を伏せ、小さく息を吐いた。
「……本当に、消えちゃったんだね」
その言葉に、ほのかが短く頷く。
「ええ。
妖精からの命令系統は、完全に途絶えている」
淡々とした口調だったが、そこには確かな断絶の重みがあった。
「どうやら私たちは、もう“指揮下”にはいないらしいわ」
ほのかの腰元には、黒い狼――クロが影のように寄り添っている。
彼は周囲を警戒するように低く唸り、静かに言った。
「指示がなければ、
自分たちで判断して動くしかないな」
それは確認でも、提案でもない。
事実を受け入れた言葉だった。
ほのかは、わずかに口元を緩める。
「……そうね」
そして、視線を遠くへ向ける。
「ヒカリだけに、
全部を背負わせるわけにはいかないもの」
かなではその横顔を見つめ、静かに頷いた。
高架の隙間から見える空の向こう、
遠い海の方角で、青白い光がかすかに揺れている。
それはまだ、何も語らない。
けれど――確実に、次の局面が始まろうとしていた。




