帝国 失われた三剣
帝国司令部。
円形の作戦室には、報告書の束と、言葉にならない沈黙が積み重なっていた。
将軍レムルが、静かに書類を置く。
「……第八位騎士、戦死。
第六位、第三区画にて応答途絶。
第三位――確認……死亡」
淡々とした報告だった。
感情を挟む余地はない。
だが、最後の言葉が落ちた瞬間、室内の空気は凍りついた。
中央。
薄いカーテンの奥、玉座のような椅子に腰掛けた影が、わずかに動く。
皇帝アトラ。
低く、深い声が、沈黙を割った。
「……我らが剣が、三つ折れたか」
誰も応えない。
レムルは一歩進み、深く頭を垂れた。
「このままでは、戦の形を保てません。
前線を下げ、態勢を立て直すべきかと」
沈黙。
やがて、アトラはゆっくりと机上の地図へ指を伸ばす。
複数のエネルギーポイントが示された盤面。
その指先は、迷うことなく、一点をなぞった。
「次に狙われるのは――この“中心線”だ」
静かな声。
だが、そこに迷いはない。
「ここを落とされれば、我々の世界は沈む。
すべての“流れ”が、ここへ集っている」
カーテンの向こうで、皇帝の赤い瞳が、わずかに光った。
「守れ。
命を賭してでもだ」
その命令に、異を唱える者はいなかった。
――その頃。
帝国の治療室。
消毒薬の匂いと、機械の低い駆動音が満ちる空間で、グランはその報を聞いていた。
包帯に覆われた拳が、知らず震える。
「……俺が、もっと早く動けていれば……」
呟きは、誰にも届かない。
悔しさを押し殺すように、彼は天井を見上げた。
白い照明の向こう――
そこにもまた、細い光の筋が、静かに走っていた。
まるで、戦場と同じ空が、ここにも続いているかのように。




