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彼女の選んだ世界  作者: taka
第14章 代償と禁忌
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補給管制室:ブーストセル管理区画

壁一面に並ぶ、無数の光球。

そのひとつひとつが、魔法少女たちの“力の種”を示していた。


クロは人型を取らぬまま、影として補給官の前に現れる。


「……現場での臨時試験に使用する。

 報告は、俺のコードで通せ」


「許可は――」


「すでに、上層の承認は下りている」


冷ややかな声。

だが、そこに迷いはなかった。


クロはブーストセルを二つ受け取り、

静かに光の回廊を離れる。


その直後――

通路の向こうから、金色の光が滲み出た。


ヴォイドだ。


「クロ。どこへ行く」


「……戦場に戻るだけだ」


短い沈黙。

ヴォイドの金の瞳が、一瞬だけ揺れる。


「お前は……感情を持ちすぎている」


「それが罪なら――」

クロは振り返らない。


「俺は、喜んで罰を受けよう」


次の瞬間、

クロの姿は影の中へと溶け、

回廊には再び、無機質な静寂だけが残った。



――雪代かなでの部屋


夜。


窓の外で、街灯が静かに明滅している。

カーテン越しの橙色の光が、部屋の隅を淡く照らしていた。


ベッドの上で、雪代かなでは膝を抱え、うつむいていた。

その肩に、黒い狼が静かに身を寄せている。


「……ヴォイドは、もう来ないの?」


震えを抑えた声。

問いというより、確認に近かった。


「さぁな」

クロは低く答える。

「今のお前に必要なのは、命令じゃない」


かなでは顔を上げ、クロを見る。

けれど彼は視線を合わせず、ゆっくりと目を閉じた。


次の瞬間――

淡い光が、クロの身体から溢れ出す。


空気が震え、

小さな光の粒が宙を舞った。


「……これは……?」


かなでの声が、かすれる。


光は彼女を拒まなかった。

ブーストセルが展開され、

淡い粒子となって、かなでの身体へと静かに吸い込まれていく。


胸の奥が、熱を帯びる。

心臓の鼓動が、ひとつ、強く跳ねた。


「お前の力を、少しだけ増やした」

クロの声は低く、短い。


「……死ぬなよ」


その言葉に、かなでは目を見開いた。


「え……?」


クロは笑わなかった。

慰めるような言葉も、誓いもない。


けれど――

その瞳には、確かに意志があった。


冷たい計算ではない。

選別でも、命令でもない。


「……ありがとう、クロ」


小さく呟いたその声に、

クロは答えなかった。


ただ静かに、彼女の傍に座り続ける。


部屋の外で、街灯がまたひとつ、明滅した。


その夜、

雪代かなでは初めて知った。


――力を与えられるということは、

 守られることとは、違うのだと。

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