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彼女の選んだ世界  作者: taka
第14章 代償と禁忌
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妖精界:白霧の回廊

世界を覆っていた光が消えてから、まだ数日も経っていない。


それでも、街に漂う空気は、

安堵よりも先に――張りつめた緊張に満ちていた。


守護者との戦いは、あまりにも多くを奪った。

魔法少女たちは次々と倒れ、

帝国の兵は結界の奥で、その姿を消していった。


残されたのは、焦げた大地と、

癒えきらぬ傷を抱えた者たちだけ。


そして――

そのすべてを、妖精たちは静かに見下ろしていた。


彼らの視線に、哀悼はない。

あるのは、数字と効率、そして次の一手。


失われた戦力。

消耗した契約者。

まだ動かせる“駒”の数。


「……想定内ね」


どこかで、冷たい声がそう呟く。

その言葉とともに、

この戦いが「終わっていない」ことだけが、

確かな現実として、世界に刻まれていった。


――妖精界:白霧の回廊


無機質な白い光が差す、どこまでも続く円環の空間。

上下左右の感覚すら曖昧なその場に、

数多の妖精たちの幻影が静止したまま浮かんでいた。


空気は沈黙に満ちている。

ここでは、感情も時間も、意味を持たない。


「――報告を開始します。

 守護者級対象との交戦により、魔法少女総数の一六%が戦闘不能」


淡々とした無機質な声が響く。


「現地妖精のうち、四体が行方不明。

 補充は予定通り、次期契約者から――」


数字だけが積み上げられていく。

その瞬間、中央に浮かぶ黄金の輪が、わずかに光を帯びた。


〈……これ以上の損耗は、我々の計画に遅延をもたらす〉


女王の声。

それは怒りでも悲嘆でもない、

“事実の確認”のような冷たさを持っていた。


〈よって、魔法少女個体の力を一時的に引き上げる

 “試験運用”を許可する〉


回廊の空気が、ほんのわずかにざわめく。


〈必要エネルギーは、回廊から直接供給せよ〉


その一言が意味するものを、

ここにいる妖精たちは全員、理解していた。


――ブーストセル。


魔法少女一人の戦闘力を、理論上五倍まで引き上げる強化装置。

同時に、生命力と魔力を急速に消耗させる、

極めて危険な“禁忌”の技術。


「被験者の選定は、各地の現地妖精に一任される」


無機質な声が、当然のように続けた。


ヴォイドは沈黙していた。

犠牲は計算済み。

感情は不要。

それが正しい判断だと、彼自身が最も理解している。


――だが。


その会議を、回廊のさらに奥。

光の届かぬ影の中から、ひとつの存在が見つめていた。


黒い狼の姿をした妖精――クロ。

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