巫女の社 ― 世界樹の下の再会
空の色は、夜と朝のあいだ。
月と太陽の光が交わるその一瞬、
世界の中心にある“社”が静かに息づいていた。
その奥――
巨大な根の上で、少女たちが目を覚ます。
「……長かった眠りでしたね」
最も若い巫女が、静かに伸びをしながら言った。
その衣は純白。
けれど袖の端には淡い金糸が走り、
それが微かに脈を打つように光っている。
隣で立ち上がった最年長の巫女が、ゆっくりと頷いた。
「ええ。けれど、呼ばれたということは――“始まった”のです。」
天井の隙間から、まばゆい緑の光が差し込む。
見上げた先には、天へ届くほどの巨木――世界樹。
その枝先には、かすかに芽吹く白い輝きがあった。
若い巫女の唇が震える。
「見てください……新しい芽が……!」
長老の巫女は目を細めた。
「白の継承。
久方ぶりですね――真なる光を継ぐ者が現れたのは。」
他の巫女たちが祈るように膝をつく。
空気が静まり返り、世界樹の鼓動が大地に伝わる。
「この世界樹は、まだ枯れてはいない。
けれど、命の流れが滞り始めている。」
「……原因は、やはり妖精たちの干渉?」
「それだけではありません。
外の世界が“願い”を代償にして力を得た。
人の欲望が流れを濁らせているのです。」
若い巫女が悲しげに俯いた。
「そんな……。
人々はきっと、“守りたい”だけなのに。」
長老はその肩に手を置き、優しく微笑む。
「守りたいという願いは、正しいのです。
けれど、正しさを操る者がいれば――
その願いは、いつしか“奪う力”へと変わる。」
「……では、白の継承者は?」
長老の瞳が、芽吹いた白い光を見つめる。
その光の奥で、どこか懐かしい少女の姿がちらついた。
「彼女はまだ知らぬでしょう。
自らが“選ばれた”ことも、
その運命がどれほど重いものかも。」
巫女たちは一斉に頭を垂れ、静かに祈りを捧げる。
彼女たちの唇が、同じ言葉を紡いだ。
「――どうか、この世界を。」
その祈りに応えるように、
世界樹の枝先の白い芽がひときわ強く輝いた。
そして、風が吹いた。
世界を包む柔らかな風。
それはまるで、ヒカリの胸のダイヤに触れ、
彼女の中の光を呼び覚まそうとしているかのようだった。




