表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の選んだ世界  作者: taka
第13章 巫女と光の記録
45/71

妖精の王座

深く、どこまでも暗い空間。

光も音も届かぬその中心で、ただ一輪の白い花が咲いていた。

妖精界――“永劫の庭”。

そこはあらゆる世界と繋がりながら、どの世界からも隔絶された場所。


花の根元に浮かぶ王座。

そこに座すのは、妖精の女王。

長く流れる銀の髪を揺らしながら、

冷ややかな微笑を浮かべていた。


「ヴォイド」


低く響く声。


金髪の妖精騎士は跪き、静かに頭を垂れる。

「女王陛下。命により、報告に参りました。」


「語りなさい。地上での“駒”たちの進捗を。」


ヴォイドはわずかに視線を伏せ、

淡々と状況を述べ始めた。


「帝国勢との交戦は継続中。

 魔法少女たちは依然、我々の指示に従い活動しています。

 ただし、対象E-17――雪代かなで。

 任務違反を犯したため、契約を破棄しました。」


女王の唇がゆっくりと歪む。

「そう……“あの子”は感情に流されたのね。」


「はい。自己判断により行動、規律違反です。」


女王は右手を頬に添え、長い爪を軽く弾いた。

その音は氷を割るような冷たさを持って響く。


「適切な判断です、ヴォイド。

 だが、別の報告も届いています。――“白の光”の件。」


ヴォイドの眉がわずかに動いた。

「はい。確認しております。

 結界内で発生した高純度の自然波動体……

 我々の観測網でも、あれほどの純度は前例がありません。」


女王は目を細める。

その瞳はまるで無数の世界を映し込む鏡のようだった。


「白の継承者……。

 世界樹の力に直接干渉できる存在。

 つまり、我らが“探していた実”に最も近い。」


隣に控える側近の妖精が一歩前へ出る。

「陛下。対象の回収を実施しますか?」


女王は一拍の沈黙ののち、柔らかく微笑んだ。


「ええ。放ってはおけないわ。

 この世界で生まれた偶然の光が、

 私たちの未来を左右するかもしれない。」


「はっ。」


側近が頭を下げる。


ヴォイドは視線を落としたまま、

微かに口を開いた。


「……対象の排除ではなく、回収命令、という解釈でよろしいでしょうか。」


女王の声が甘く響く。


「ええ。壊してしまうには惜しい子ですもの。

 “果実”を得るためなら、器は無傷でなければ。」


「……了解しました。」


ヴォイドは頭を深く下げた。

だがその背中に、誰にも見えぬほどのわずかな影が差した。


「お前の忠誠、信じているわ。

 ――決して、情を持ってはならぬ。」


「承知しております。」


声に感情はない。

けれど、胸の奥に小さな亀裂が走った気がした。


退室するヴォイドの足音が遠ざかると、

女王は再び白い花へと視線を落とした。


花弁の奥で、金色の露がひとつ、静かに揺れる。


「……世界は、ようやく動き出したわね。」


その呟きが、永劫の庭に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ