守護獣、覚醒
背中の白い茨が、天を裂くように一斉に伸びた。
それは“攻撃”ではない。
外敵を排除する意思すら伴わない、
ただの――防衛反射。
茨が振るわれるたび、空気が裂け、
白い衝撃波が無差別に周囲へと広がっていく。
悲鳴が上がった。
巻き込まれた魔法少女たちが宙を舞い、
展開していた魔法陣が砕け、光となって霧散する。
これまで相手にしてきた“魔物”とは、次元が違う。
力の質も、規模も、意味すらも。
帝国兵たちですら、本能的に距離を取っていた。
「……結界、限界です」
「防衛機能が追いつかない!」
指揮系統の声が重なり、
紫の結界は、もはや役割を果たしていなかった。
世界と戦場の境界が、溶け落ちていく。
その中心で、白い守護獣が咆哮する。
それは怒りではない。
敵意でもない。
――理解されなかった存在が、
世界そのものを守ろうとして暴走している音。
ヒカリは一歩、前に出た。
胸元のハートの核が、激しく脈打つ。
守護獣の震えと、自分の鼓動が重なっていく。
「……大丈夫」
声は、叫びにならなかった。
それでも、想いだけは確かに向けた。
だが――
白い守護獣は、すでに
**“誰の声も届かない場所”**へ踏み込んでいた。
守るべき対象と、
排除すべき脅威の区別が、完全に消え去った瞬間。
――覚醒。
それは進化ではない。
希望でもない。
制御を失った防衛機構が、
世界に牙を剥いた瞬間だった。




