静寂と動揺
ヒカリの目の前に、白い守護獣が静かに佇んでいた。
その巨体から溢れていた光は、先ほどまでとは違い、
今は弱々しく、迷子のように揺れている。
まるで――
自分が何を守るべきか、分からなくなったかのように。
ヒカリは、そっと一歩踏み出した。
足元の地面が、わずかに沈む。
胸元のハートの核が、微かに脈打った。
「大丈夫……」
手を伸ばし、静かに声をかける。
「私は、あなたを――」
その言葉が終わる前だった。
空気が、重く沈む。
地面の奥から、低い振動が伝わってくる。
音というより、圧力に近い感覚。
次の瞬間、
結界の外縁から複数の光線が降り注いだ。
空を見上げると、そこには――
再び高度を取り、魔法陣を展開する魔法少女たちの姿。
「妖精からの指示!」
「対象確認!」
「――守護者を制圧、捕獲せよ!」
冷たい号令が重なり、
光の照準が一斉に、白い守護獣へと向けられる。
「……っ、待って!」
ヒカリは叫んだ。
「そんなことしたら――!」
だが、声は届かない。
結界を包む光が歪み、
守護獣の周囲で魔力の流れが乱れ始める。
白い守護獣が、大きく息を吸い込む。
光が、一瞬だけ収束し――
次の瞬間、空間そのものを震わせる咆哮が放たれた。
それは威嚇ではない。
怒りですらない。
――悲鳴だった。
その衝動に呼応するように、
エネルギーポイントが耐えきれず、砕け散る。
反転する白い光。
暴走する魔力。
守るために生まれた力が、
**“守る対象を見失った瞬間”**だった。
ヒカリの胸元で、ハートの核が強く脈打つ。
世界が――
再び、軋み始めた。




