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巫女たちの目覚め
白い社の中。
時の流れから切り離されたような静寂の中で、
長い眠りについていた巫女たちが――同時に、目を開いた。
「……目覚めましたね。」
静かな声が、空間に波紋を残す。
「はい。
ようやく、“真の継承”が始まりました。」
巫女たちはゆっくりと身を起こし、
社の奥――次元の彼方へと視線を向ける。
そこに広がるのは、世界樹。
無数の枝を持ち、幾つもの世界を支えてきた、命の源。
削られ、傷つき、
なおも立ち続けていたその枝が、今――
わずかに、光を取り戻し始めていた。
枝の先端。
かつて枯れ落ちることしかなかった場所に、
小さな、新しい芽が生まれている。
「……間違いありません。」
巫女の一人が、かすかに息を呑む。
「世界は、まだ終わってはいない。」
白い社に、静かな確信が満ちていく。
「彼女が選びました。
守ることを。
奪うのではなく、受け継ぐことを。」
その言葉と共に、
世界樹の光が、ほんのわずか強まった。
それは、祝福ではない。
希望ですらない。
――ただ、“再生が始まった”という、事実。
白い社は再び静寂に包まれる。
だが、もう眠りに戻る者はいなかった。
物語は、次の段階へと進んだのだから。




