戦場への降臨
暴走する結界の中心。
砕けかけた空間が悲鳴を上げ、
帝国兵も魔法少女も、爆発的な光に呑まれて身動きが取れずにいた。
視界が白に染まり、
音が歪み、
時間そのものが引き伸ばされる。
――その中に。
一筋の白い光が、静かに落ちてきた。
「……な、なんだ……?」
「女の子……?」
光は衝撃を伴わない。
破壊ではなく、“降臨”だった。
白光の中から、ひとりの少女が歩み出る。
純白の衣を纏い、
風を従えるように佇むその姿。
――立花ヒカリ。
周囲の魔法少女たちが、言葉を失う。
その中で、いろはが小さく息を呑んだ。
「……ヒカリ……ちゃん……?」
ヒカリは答えなかった。
ただ静かに、前へ進み、
ゆっくりと手を掲げる。
次の瞬間――
空気が震えた。
暴走していたエネルギーが、逆流するように収束していく。
砕けかけていた結界の核が悲鳴を上げ、
光が、吸い込まれるようにヒカリへと集まっていった。
帝国兵の一人が、呆然と呟く。
「……この力……
まるで……世界そのものを、掴んでいるようだ……」
爆心の光が、完全に消える。
そこに残っていたのは、
静かな風を纏い、空間の中心に立つ――
白の魔法少女。
ヒカリは、戦場を一望し、声を張った。
「――ここから出て。みんな!」
その言葉と同時に、
白い光が大きく広がる。
光の壁が生まれ、
魔法少女と帝国兵を区別なく包み込み、
やさしく、しかし抗えぬ力で――
結界の外へと押し出した。
次の瞬間、
戦場は静寂に包まれる。
光の中で、
グランと夜凪ほのかの視線が、一瞬だけ交差した。
「あれが……」
グランが、かすれた声で呟く。
ほのかが静かに続ける。
「――“真の”……」
二人の言葉が、重なった。
「魔法少女。」
白い光の中心で、
ヒカリはただ、静かに立っていた。
世界が――
確かに、動き始めていた。




