覚醒 ― 光の舞踏
ダイヤが、静かに宙へと浮かび上がった。
透明なハート型の核が、脈打つように光を放つ。
それに呼応するように、
昨日までヒカリの胸元にあったネックレスが、
音もなく崩れ、光の粒となって溶けていく。
粒子は散らず、
まるで意思を持つかのように、
ハート型の核を中心に集まり、外装を形成し始めた。
同時に――
ヒカリの身体を包んでいた衣服が、白い光となってほどける。
粒子が舞う。
髪が揺れ、空気が凍りつく。
一瞬、
世界そのものが息を止めたかのような静寂が訪れた。
その静寂を破るように、
空中から白い布が現れる。
それは落ちるのではなく、
舞うように、優しくヒカリの身体へと降りてきた。
白布は触れた瞬間、
まるで生き物のように形を変え、
腕へ、脚へ、胴へ――そして髪へと溶け込んでいく。
――光の渦。
渦の中心で、
純白の衣装が編み上げられていく。
無垢でありながら、戦うための形。
布は鎧となり、意志となり、
ヒカリの存在そのものを包み込む。
やがて、光が収束する。
そこに立っていたのは、
白の衣を纏った一人の少女。
瞳の奥には、静かな金の輝きが宿っていた。
風が止み、
音が戻り、
残ったのは――“戦士”。
「……これが、私の……力……?」
戸惑いと、確かな実感が混じった声。
その背後から、巫女の声が静かに響く。
「それは“真なる魔法少女”の力。
世界に選ばれし者が、命の代わりに得る力です」
ヒカリの胸元で、
ハート型の核が、穏やかに鼓動する。
「その核には、
貴方の前にこの力を継いだ少女たちの意志が宿っています」
その瞬間――
ヒカリの脳裏に、無数の光景が流れ込んだ。
剣を握る手。
涙に濡れた頬。
祈り、叫び、
それでも誰かを守ろうと立ち続けた少女たち。
知らないはずの記憶。
けれど、確かに“想い”だけが伝わってくる。
「貴方が倒れぬように――
私たちが、ここに居る」
その言葉と共に、
ヒカリはゆっくりと目を開いた。
白い光の中、
彼女はもう、ただの少女ではなかった。




