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声の導き
夕暮れの帰り道。
空はまだ明るく、街はいつも通りの時間を刻んでいた。
――そのはずだった。
ヒカリは、ふいに足を止める。
音ではない。
揺れでもない。
けれど、空気の“向き”が変わった。
次の瞬間、
街の向こうが、白く染まった。
まるで太陽が、地上に落ちたかのような光。
遅れて、重い圧が胸を叩く。
空気が、震えた。
「……なに、今の……?」
声が、自分のものかも分からなかった。
心臓が強く打ち、呼吸が浅くなる。
――その時。
「駄目……」
声が、内側から響いた。
耳ではなく、
言葉ではなく、
感情そのものが、直接流れ込んでくる。
「そこで、そんなに力を使ったら……
“崩壊”を起こす……!」
(……誰?)
問いが形になる前に、
胸の奥がざわついた。
それは恐怖ではなかった。
もっと切迫した、
“間に合わなくなる”という感覚。
「貴方は――」
声が、静かに続く。
「貴方は、見届けなければならない。」
理由は告げられない。
意味も、説明もない。
けれど――
その言葉だけは、抗えなかった。
次の瞬間、
ヒカリの身体は、すでに走り出していた。
鞄を抱えたまま、
夕焼けを裂く白い光へ。
まだ何も知らないまま。
けれど確かに、
世界の“限界点”へ向かって。




