放課後の教室で
昼下がりの教室は、少し眠たくなる。
窓の外では春風がカーテンを揺らし、その白い布の影が、机の上をゆっくり滑っていく。
チャイムが鳴り、授業が終わった。
途端に、教室の空気がふっと軽くなる。
話題は、やっぱり――魔法少女のことだった。
「ねえ、昨日のニュース見た? あの人、めっちゃ可愛かった!」
「ピンクの衣装の子でしょ? もうファン多いよね」
「もし私が魔法少女になったら、テレビとか出られるかなぁ?」
笑い声が弾む。
机を寄せ合い、雑誌を広げるクラスメイトたち。
そこには、光に包まれてポーズをとる魔法少女の写真。
私は窓際の席から、その様子を静かに眺めていた。
日差しが頬に当たって、少し眩しい。
――みんな、楽しそうだな。
胸の奥が、ほんの少しだけきゅっとする。
羨ましい、とは少し違う。
ただ、あの笑顔の輪の中に、
自分の気持ちが追いついていないだけ。
彼女たちの笑い声を聞いていると、
理由もなく、誰かの役に立てたらいいな、と思ってしまう。
もし魔法少女になれたとしても、
テレビに映りたいわけじゃない。
拍手されたいわけでもない。
――ただ、
誰かが泣かなくて済むなら、それでいい。
でも、それ以上のことは、まだよく分からなかった。
「ヒカリも、やっぱりなりたいでしょ? 魔法少女!」
名前を呼ばれて、少しだけ考える。
言葉が、喉の奥で一瞬止まる。
本当は、
「なりたい」と即答できるほど、覚悟なんてない。
「……うん。まあ、なれたらね」
曖昧な返事。
それでも、みんなは笑った。
教室には春の光があふれ、
風に揺れるカーテンの影が、床にゆらゆらと踊っている。
その光景が、なぜか少しだけ、遠く感じられた。




