表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の選んだ世界  作者: taka
第6章 レムリア帝国
27/72

出立 ――交錯の夜明け

玉座の間を出ようとする獅子将軍レムルの背に、一人の青年が静かに進み出た。

 膝をつき、胸の前で拳を握る――帝国騎士の礼。

 その身は若くとも、瞳には確かな覚悟と忠誠が宿っている。


 「将軍閣下。どうか、私を――この身をお遣いください」


 レムルは足を止め、低く問い返した。


 「……何のつもりだ、グラン」


 「閣下の御身に万一があれば、皇帝陛下は深く悲しまれます。

  ならば、我ら若輩が前に立つべきです。どうか、ご下命を」


 短い沈黙。

 やがてレムルは、静かに息を吐いた。


 「……よかろう」

 その声は重く、しかし揺るぎがなかった。

 「その忠義、無駄にするな」


 「はっ!」


 グランは深く頭を下げ、立ち上がる。

 そのまま廊下を駆け、己の配下たちを呼び集めた。


 集まった兵たちは皆、剣を握り締め、誇りを宿した瞳で主を見つめている。


 「聞いたな、諸君。これより我らは帝国の剣となり、盾となる!」


 一瞬、冗談めかした笑みを浮かべて、


 「行き先は楽じゃないが……生きて帰ったら、一杯奢れよ?」


 と軽口を叩く。

 だが次の瞬間、その表情は引き締まり、声が低く落ちた。


 「――我々は帝国の剣であり、盾だ。敗北は許されない」


 「「はっ!!」」


 短く響いた号令が、石造りの回廊に反響する。


 グランは剣を掲げた。


 「行くぞ!」


 旗が翻り、重い扉が開かれる。

 帝国の騎士たちが、静かに、しかし確かな足取りで出立していく。


薄明の空に、十字の紋章を掲げた旗が、ゆっくりと遠ざかっていった。


 その同刻――。


 地球の各地で、妖精たちがざわめいた。


 小動物の姿を取る者。

 花弁の中に潜む者。

 影の中に佇む者。


 すべての妖精が、一斉に帝国の動きを感知していた。


 「……帝国が動いたわ」

 「全魔法少女へ連絡。優先指定コード――“レムリア”」


 次々に灯り始める通信の光。


 世界中で、少女たちが武装を整え始める。

 空気が、確かに“戦の匂い”へと変わっていった。


 そして、静かな森の中。


 月明かりに照らされた黒い狼が、ふいに背後を振り返る。


 「……ほのか。出番のようだ」


 その声に応じて、影の中から一人の少女が歩み出た。


 長く艶やかな黒髪。

 無駄のない動作。

 その瞳には、迷いのない光が宿っている。


 「……了解」


 一拍置き、少女は静かに告げた。


 「――任務開始」


 夜風が吹き抜ける。


 帝国、魔法少女、妖精。

 それぞれの正義が、同じ夜明けへと歩み始めていた。


 ――世界の均衡が、静かに傾き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ