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彼女の選んだ世界  作者: taka
第6章 レムリア帝国
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獅子の将、立つ

城の回廊に、重い足音が響いていた。

鋼鉄の靴が床を叩くたび、深紅のマントが揺れる。


レムル将軍。

帝国最強の武人にして、皇帝アトラの右腕。


彼はいつものように、静かに歩みを進めていた。


廊下の両脇には整列した兵士たちが並び、頭を垂れている。

その一人ひとりの胸には、先ほど戦死した第七班の徽章が、布で覆われていた。


レムルは足を止め、右拳を胸に当てる。


「――勇敢なる同胞に、敬礼」


低く響く声に合わせ、全兵が一斉に胸に手を当てた。

重く、静かな敬意が、回廊に満ちる。


やがてレムルは会議室に入る。

そこではすでに、ジェイドが報告の準備を整えていた。

机の上には、損壊したブルークリスタルの破片。


「また……一人、若い命が散ったか」


怒りではない。

その声は、深い哀しみを帯びていた。


ジェイドは目を閉じ、ゆっくりと頷く。


「ええ。ですが、彼の報告は確かでした。

 敵の出現地点は、地表の“魔力脈”と一致しています。

 ……つまり、我々の探している“根源”が、近い可能性がある」


「それが真ならば、動かねばなるまい」


レムルは腕を組み、瞳を細めた。


「陛下の御命を受けた以上、

 我らが血でその道を切り拓くのみだ。

 この世界の者たちが、何を誤解していようと……」


ジェイドが、ふっと苦笑する。


「誤解、ですか。

 ……彼らは自分たちが“正義”だと信じている。

 ですが、それを教えたのは誰なのか――

その答えを知るまでは、軽率に剣を振るうべきではありません」


レムルは一瞬、無言になり――

やがて、小さく息を吐いた。


「お前は変わらんな、ジェイド。

 俺にはその理屈は難しすぎる。

 だが……俺も、無駄に命を散らす戦いは好かぬ」


その言葉に、ジェイドが小さく笑みを返す。


「ならば、今回は同意見ですね」


扉の外から号令が響いた。

伝令の声が、廊下にこだまする。


「第一戦団、出撃準備完了!

 将軍閣下のご指示を!」


レムルは立ち上がる。

その瞳には、迷いのない光が宿っていた。


「――命を懸けて戦った者の意志を、次に繋ぐ。

 それが、我らの誇りだ」


重い扉が開き、光が差し込む。

その光を背に、獅子将軍は歩み出した。


戦場へ――

静かに、確かに。

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