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彼女の選んだ世界  作者: taka
第5章 すれ違う心
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囁き

――また、あの場所。


光の海。

無限に続くような白い空間の中、

一本の巨大な樹が、静かにそびえていた。


枝葉は天を覆い、幹は山のように太い。

けれど、その緑はどこか褪せて見える。


ヒカリは息を呑んだ。

夢だと分かっている。

それでも、肌に触れる風の感触も、光の温度も、あまりにもリアルだった。


――誰かが、泣いている。


女の人の声。

遠く、霞んでいる。

それなのに、不思議と意味だけは伝わってくる。


『……世界樹が……枯れてしまう……』


風が強く吹き、葉が舞い落ちる。


『誰かが……大地の命を……使っている……』


その声は、泣きながら何かを守ろうとしているようだった。


『このままでは……世界は……』


ヒカリは声を張り上げる。

「待って! あなたは誰なの!? どうすれば――」


けれど、声は届かない。

風に飲み込まれ、世界が歪む。


視界が暗転した。

すべてが闇に沈む。


――静寂。


目を開けると、木の天井が見えた。

朝の光が障子越しに差し込み、部屋を淡く照らしている。


「……夢?」


ゆっくりと身を起こす。

体が少し重い。

それでも、昨夜の出来事が頭から離れなかった。


――土蔵。

――ネックレス。

――祖母の声。


思わず、自分の手を見下ろす。


そこに、あった。


昨夜、夢の中で見たあのネックレス。

銀でも金でもない、見たことのない素材。

内側に光の粒を閉じ込めたように、淡く輝いている。


「……綺麗」


呟いた、その直後。

胸の奥がざわついた。


――何かが、足りない。


台座の中央。

そこに嵌め込まれていたはずの“何か”。

宝石でも石でもない、もっと別の“核”のようなもの。

それが抜け落ちた痕跡だけが、確かに残っていた。


「……これ……」


首を傾げたとき、障子の向こうから声がする。


「ヒカリ、朝ごはんですよ」


祖母の、静かな声。


「はーい……!」


ネックレスを握りしめ、ヒカリは返事をした。

その手の中で、宝飾の光が一瞬だけ強く瞬く。


気になる胸のざわめきを抱えたまま、

ヒカリは布団を整え、朝の支度を始めた。


――けれど、

昨日までと同じではない、そんな気がしていた。

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