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彼女の選んだ世界  作者: taka
第5章 すれ違う心
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小さな違和感

夕暮れの匂いが台所を満たしていた。

まな板の上で、トントンと包丁の音が響く。

ヒカリはテーブルに突っ伏しながら、母親の背中をぼんやりと見ていた。


「ねぇ、お母さん。最近さ、魔法少女って増えてるんだって」

「ふふっ、またテレビの話?」


「うん。でも……なんか、みんなすごいなぁって。

 怖くないのかなって思って」


母親は手を止め、少し考えるように首を傾げた。

「そりゃ、怖いと思うわよ。

 でも……守りたいものがあると、案外動けちゃうのかもね」


「……誰かを、守りたい、か」


ヒカリは小さく呟いた。

その言葉は、胸の奥に静かに沈んでいく。

テレビの中の彼女たちみたいに、人を助けたい――

理由はそれだけで、十分な気がした。


母親がふと、思い出したように言う。

「そういえば、お祖母ちゃん元気かしら。最近顔出してないわよね」

「あ、そうだね……」


ヒカリは顔を上げ、壁の時計を見る。

金曜日。

明日は学校も休みだ。


「……明日、行こうかな。おばあちゃんのところ」

「それがいいわ。きっと喜ぶわよ」


母親の声は柔らかく、

キッチンの湯気の中に溶けていった。


けれどヒカリの胸の奥では、

昨夜の夢がまだ、くすぶっていた。


――落ち葉が増えていた、あの光景。

風のないはずの森で、次々と散っていく葉。

そして、耳に残る“きしむ音”。


「……おばあちゃん、何か知ってるかな」


誰に言うでもなく呟いた声は、

湯気の向こうへ、静かに消えていった

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