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彼女の選んだ世界  作者: taka
第4章 揺らぐ光
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残響

――戦いが終わったあと。

夜風が、焦げた匂いを運んでいた。

結界は消え、街の明かりが戻ってきている。

けれど、かなでの胸の中はまだ真っ暗だった。


「……ねぇ、ヴォイド」

『報告は後だ。まずは帰還を――』

「どうしてあんなに戦わせたの?

 どうして、あんな風に死ななきゃいけないの?」


かなでの声は震えていた。

矢を放った感触が、まだ指先に残っている。

自分の放った光が、あの帝国兵を貫いた。

あの人は、最後に魔物を倒した。

誰かを守るように。


ヴォイドの声は冷たく、それでいてわずかに苛立ちが混じっていた。

『彼らは敵だ。君の情けで救われる命ではない。』

「……本当に、敵なの?」


かなでの視線は地面の光の残滓を見つめていた。

帝国兵が消えた場所。そこにまだ、かすかに青い光が残っている気がした。


「だって、あの人……魔物を倒したよ。

 人を、助けてた……!」


ヴォイドは短く沈黙し――

次に放った言葉は、静かで、それゆえに痛烈だった。


『……偶然だろう。

 君は何か、確かな根拠でも持っているのか?』


かなでの喉が詰まる。

言葉にできない悔しさが胸を締めつけた。


「根拠なんて、そんなの……

 でも、見たんだよ……!」


『見たものが真実とは限らない。

 敵がどう動こうと、君が揺らげば戦いは乱れる。

 感情を削ぎ落とした方が、結果的に多くを救える。

――その方が長く、生き残れる。効率的だろう?』


「……そんな言い方、ひどいよ……」


ヴォイドは答えなかった。

ただ、静かに背を向け、金色の光を残して夜空に消えた。


残されたかなでは、空を見上げたまま立ち尽くす。

「……私は、守りたかっただけなのに……」




――数時間後。


夜の街。

ヒカリは家に帰り、制服のままリビングのソファに腰を下ろしていた。

テレビの画面には、ニュース番組が流れている。


「本日も新たな魔法少女の姿が確認されました!

 映像は市街地での戦闘の様子です!」


画面の中では、光の衣を纏った少女が笑顔で人々に手を振っていた。

その笑顔を見て、ヒカリは小さく息を漏らす。


「……また、増えたなぁ……」


ニュースキャスターは、まるでアイドルの話題のように明るい声で続ける。


「魔法少女は今や、希望の象徴!

 街を守る彼女たちに、明日も注目です!」


けれど、ヒカリの胸の奥で何かがざわついていた。

笑顔の裏で、あの少女たちはどんな顔をしているのだろう――

そんな疑問が浮かぶ。


ふと、祖母の言葉が頭をよぎった。


――ヒカリ。世界の光は、いつか試される。


ヒカリはそっとテレビを消した。

リモコンの音が静かに響く。

窓の外には、薄雲の向こうでぼんやりと光る月。



そして――夜。


また、あの夢。


巨大な樹が立つ。

天に届くほどの大木は、前よりもどこか暗く見えた。

地面には、無数の落ち葉が散っている。


ヒカリは呆然と立ち尽くす。

風がないのに、ひとつ、またひとつと葉が落ちていく。

地に触れるたび、淡い光の粒になって消える。


そのたびに――

木の輝きが、ほんの少しずつ弱くなっていく。


「……やだ、これ……枯れちゃう……」


呟いた声は、誰にも届かない。

ただ、遠くで“何かが軋む音”だけが響いた。


――パキ……パキ……。


その音を聞いた瞬間、ヒカリの心臓が跳ねた。

次の瞬間、夢が砕けるように消え、彼女は布団の中で飛び起きた。


「……また、あの夢……」


窓の外には、静かな夜空。

けれど、ヒカリの胸の奥には、得体の知れない不安が広がっていた。

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