混戦の果てに
閃光。
衝撃。
誰が敵で、誰が味方かも分からないほど、
戦場は混沌に沈んでいた。
強化された帝国兵が雄叫びを上げる。
鉤爪が唸り、黒い魔物を叩き潰す。
影は霧となって四散する。
だが、すぐに別の影が背後から襲いかかる。
「――ッ!」
反射的に放たれた矢が、魔物の半身を吹き飛ばす。
しかし、その直後。
地面から、新たな影が這い出してきた。
『数が多い。
冷静になれ、かなで』
ヴォイドの声。
『帝国兵が前に出ている。
距離を取り、魔物を削れ』
「……で、でも……!」
『近づくな。
指示に従え』
命令だった。
かなでは歯を食いしばり、空へと舞い上がる。
光の矢を連続して放つ。
帝国兵の動きは速く、力強い。
鉤爪が地を砕くたび、黒い霧が舞う。
だが――
魔物たちの動きが、次第に変わった。
数の多くが、帝国兵へと引き寄せられていく。
まるで、
誰かに導かれているかのように。
『……ヴォイド。
今の、何……?』
『気にするな。
魔物の行動は予測不能だ』
胸の奥に、言いようのない違和感。
――この魔物たち……
帝国兵に、集められてる……?
気づいた時には、遅かった。
集中攻撃を受けた帝国兵が、片膝をつく。
装甲が軋み、青い光が明滅する。
「……危ない!」
咄嗟に放った矢が、
一直線に――帝国兵の胸を貫いた。
光が広がる。
帝国兵は一瞬だけ動きを止め、
ゆっくりと崩れ落ちかける。
『かなで、離れろ!』
同時に、帝国兵が最後の力で吠えた。
鉤爪が振り抜かれ、巨大な魔物を貫く。
悲鳴。
影が爆ぜる。
視界が、白に染まった。
――そして、静寂。
残ったのは、崩れ落ちた帝国兵と、黒い霧。
装甲は光を失い、
粉のように空気へと消えていく。
かなでは、震える手で口元を押えた。
「……いまの……
私の、矢……?」
返事はない。
『戦闘終了。
直ちに離脱しろ』
「……ヴォイド。
あの人……」
『――気にするな。
敵だ』
その一言が、
胸の奥に深く突き刺さった。
結界が静かに解け、
夜の街の音が戻る。
残ったのは、
かなでの荒い呼吸だけだった。
一粒の涙が、夜風に溶けた。




