放課後の屋上
放課後。
ヒカリは屋上のフェンスにもたれ、スマホを見つめていた。
画面には、昼から何度も更新されたニュース。
《昨夜、新たな魔法少女が出現》
《男性を救った“ピンクの弓の少女”》
《SNSで称賛と議論、広がる注目》
動画のサムネイルには、
遠くから撮られた桜色の光。
再生しなくても、分かる。
あれは――かなでちゃんだ。
スクロールするたび、
心の奥がざらつく。
〈可愛い〉
〈勇敢だ〉
〈目立ちすぎ〉
〈どこの学校?〉
指先が、止まった。
「……この中に、
かなでちゃんの名前が出てないのが、
せめてもの救い、か」
呟いてから、
それがとても残酷な考えだと気づく。
(知られないことで、守られてる?
それとも、切り捨てられてる?)
夕陽が、街をオレンジ色に染めていく。
世界は、何事もなかったみたいに回っている。
昨日の恐怖も、迷いも、
もう「話題」として消費されている。
「……現実って、早すぎるよ」
かなでちゃんは、
昨日、確かに震えていた。
それなのに、画面の中では
「理想のヒロイン」になっている。
その差が、どうしても受け入れられなかった。
「……魔法少女ってさ」
誰に向けるでもなく、言葉が零れる。
「本当に、守ってる側、なのかな……」
風が吹き、
フェンス越しに見える空が、ゆっくりと色を変える。
その向こうに、
昨日見た金色の輪と、
背中を向けたかなでちゃんの姿が浮かんだ。
「……無理、してないといいけど」
それは祈りでも、願いでもない。
ただの、どうしようもない本音だった。




