夜の余韻
戦いのあと。
かなでは、路地裏で膝をついていた。
呼吸が、うまく整わない。
手が、まだ震えている。
魔法の光が消え、
衣装がほどけて、制服に戻っていく。
その瞬間、現実が追いついてきた。
(……私、撃ったんだ)
守った。
助けた。
そう言い聞かせようとしても、
胸の奥がざわつく。
「……怖かった……」
呟いた声は、夜に吸い込まれた。
背後で、金色の光が揺れる。
『初陣としては上出来だ』
淡々とした声。
評価するような響き。
「……上出来、って……」
かなでは、拳を握る。
『不要な迷いはなかった』
その言葉に、胸が少しだけ痛んだ。
(……迷い、なかった……?)
本当に?
あの震えは?
あの一瞬、撃ちたくなかった気持ちは?
『帰還する』
ヴォイドはそれ以上、何も言わなかった。
かなでは、空を見上げる。
星が、やけに遠く見えた。
――その少し離れた場所。
ヒカリは、街角の影に立っていた。
桜色の光が消えていくのを、
最後まで、目を逸らさずに見ていた。
「……やっぱり」
喉が、ひくりと鳴る。
「かなでちゃん……だよね……」
胸の奥で、
何かが、静かに崩れた。
理由は分からない。
ただ、確信だけが残った。
――このままじゃ、いけない。
何が、どう、いけないのか。
それは、まだ言葉にならなかった。
夜風が吹き、
街の灯りが、ひとつずつ点っていく。
その光の中で、
ヒカリの胸の奥に、
小さな不安が、確かに根を張っていた。




