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彼女の選んだ世界  作者: taka
30章 選ばれなかった世界
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王は守り、妖精は理解した


 最初に覚えたのは、違和感だった。


(……何故だ)


 妖精騎士は宙を滑るように移動しながら、皇帝の動きを追う。

 確かに――確かに、今のは当てられた。

 角度も、距離も、魔力の流れも完璧だったはずだ。


 それなのに。


(今のタイミングを……ずらした?)


 攻撃は来る。

 だが、致命に至らない。

 空間の一部だけを切り取るような、精密すぎる迎撃。


 ――範囲を、絞っている。


 妖精は目を細める。

 次の瞬間、皇帝の回避の“癖”が見えた。


(方角……いや、違う。動いている)


 皇帝は無秩序に動いていない。

 常に、ある方向を背に取るように立ち回っている。


 その時だった。


 攻撃をかわした直後、皇帝の背後に――

 一人の白い少女が、階段を駆け上がってくるのが見えた。


 立花ヒカリ。


 妖精の口元が、歪む。


 ――理解した。


「……成程」


 光の槍を浮かべたまま、妖精は皇帝に声をかける。


「確かに貴様は強い。……だが、これはどうする?」


 槍の向きが、微かに変わる。

 皇帝ではない。

 その背後――かなでの進路へ。


(油断した)


 アトラは思考より先に動いた。


 瞬間、かなでの周囲に障壁が展開される。

 光の槍はすべて弾かれ、砕け散った。


 ――だが。


 死角。


 背後から迫った妖精騎士の一撃が、

 皇帝の腹部を貫いた。


 熱。

 鋭く、重い感覚。


 アトラの足が、ほんの一瞬止まる。


 妖精は理解した。

 今の一撃が、勝敗を分ける唯一の機会だったことを。


 これまで皇帝が使ってきた攻撃は、すべて“抑えられていた”。

 もし最初から、制限なく撃たれていれば――

 この広場ごと、妖精は消えていた。


 だからこそ、賭けに出た。


 ――守ると、知っていたから。


 血が鎧を伝う。

 それでもアトラは倒れない。


 だが、魔力の流れが、確かに揺らいだ。


 ◇


 「……っ!」


 遅れて、ヒカリが気づく。


 なぜ攻撃がかなでに向いたのか。

 なぜ皇帝が身を翻したのか。


 理屈は、まだ追いつかない。


 ただ一つだけ、胸に突き刺さる感覚があった。


 ――私の、せいだ。


 ヒカリは歯を噛みしめる。

 皇帝の背に刻まれた傷から、目を逸らせない。


 それは、彼が“選んだ”結果だった。


 遠くで、妖精の視線が再び集まる。

 戦場の空気が、明確に変わった。


 もはや偶然ではない。

 もはや探りでもない。


 妖精たちは、確信していた。


 この皇帝は、守る。


 だからこそ――

 ここで、殺せる。

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