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未来の婚約者は、裏切りの記録を持っていた  作者: マルコ


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第2部 第2話 裏切りの継承者

序章 夜に紡がれる声


 リディアが「未来の記録」を再び閉じてから三日。

 王都は平静を取り戻したかのように見えた。

 だが、地下では“何か”が動き始めていた。


 王城の最下層。

 封印区画の奥で、黒い衣の集団がひざまずく。

 「預言は再び始まる。聖女の娘が、運命を裂く者を呼び覚ます」

 その中心に立つ影が、低く笑った。

 「――それが“裏切りの継承者”だ」


第一節 彼の名を知る日


 朝。王立学院の中庭。

 青い花弁が風に舞う。

 リディアは授業を早々に抜け出し、石畳の道を急いでいた。

 目的地は、城の外れにある“旧魔術師団跡地”。


 「ルカが……そこに?」

 レナの娘・マリアが息を弾ませながら後を追う。

 「昨日の夜、あの人、学院の図書塔に忍び込んだって噂です。

  王女様、どうして彼を信じるんですか?」

 「信じてるわけじゃない。ただ……放っておけないの」


 魔術師団跡地は廃墟だった。

 崩れた天井、割れた窓、そして中央の石壇に座る黒髪の青年。


 ルカは本を閉じ、振り向いた。

 「やあ、聖女の娘。今日も未来の勉強か?」

 「ふざけないで。あなた、王の禁書庫に忍び込んだわね」

 「記録が俺を呼んだ。どうやら、俺にも“過去”があるらしい」


 彼は一枚の羊皮紙を差し出す。

 そこには、驚くべき文字が記されていた。


『ルカ・エルシェル――聖女リアナの、失われた兄。』


第二節 失われた血筋


 「……嘘よ」

 リディアの手が震えた。

 「母に兄がいたなんて、聞いたことがない」

 「俺も知らなかった。だが記録は“真実を映す鏡”だろ?」


 ルカの瞳には、確かな悲しみが宿っていた。

 「俺は、十七年前に捨てられた孤児院で育った。

  唯一の持ち物がこのペンダントだ。

  裏には“R・E.”の刻印。リアナ・エルシェルの頭文字さ」


 リディアは息を呑んだ。

 ――もしそれが本当なら。

 彼は母の兄、つまり自分の“大叔父”にあたる。


 だが、何かがおかしい。

 リアナが生まれる以前に兄がいたなど、記録にも残っていない。


 「記録は嘘をつかない。けど、真実を全部は語らない」

 ルカの声が低くなる。

 「つまり、誰かが“書き換えた”んだ」


第三節 封印された家系図


 その夜。

 リディアは王城の地下文庫へ向かった。

 手にするのは母の遺した鍵。


 最奥の部屋。

 古びた家系図を開くと、確かに名前があった。

 ――「ルカ・エルシェル」。

 出生:記録抹消。理由:王家反逆罪。


 リディアは凍りついた。

 「反逆罪……?」

 その瞬間、背後から声がした。

 「見つけてしまったか、リディア」


 現れたのは父、アレン国王。

 彼の手には、まだ封印の印が輝いている。


 「父上……どうして隠していたの?」

 「彼は“裏切りの継承者”だ。

  十七年前、王妃リアナを守るために“記録”に触れ、未来を暴走させた」


 リディアは信じられなかった。

 「じゃあ、彼は悪人なの?」

 「わからない。だが一度でも“記録”に選ばれた者は、再び呼ばれる運命にある」


第四節 兄妹の対話


 夜風の中、塔の屋上で再び会う二人。

 「……俺が何者でも、君を傷つけるつもりはない」

 「でも、父は言ってたわ。あなたは“裏切りの継承者”だって」

 「裏切り、ね。……確かに、俺は一度世界を裏切った。

  リアナを救うために“記録”を開いた。そのせいで国が一度滅びかけた」


 リディアは息をのむ。

 「でも母は……あなたを覚えてなかった」

 「記録が、俺の存在を消したんだ。彼女が未来を変えた瞬間にな」


 ルカは空を見上げる。

 「だから、今度は俺が償う番だ。

  記録を完全に封じるために、俺は――再び裏切る」


 「裏切る……?」

 「王国を。君を。すべてを」


終章 動き出す影


 その夜、王都の空に黒い閃光が走った。

 地下に眠っていた“第三の記録”が覚醒する。


 炎ではない。光でもない。

 ――時間そのものが揺らいだ。


 リディアは走り出す。

 「ルカ! どこへ行くの!」

 「俺は、未来を壊す。君が選ぶ前に、全部の記録を終わらせるために!」


 彼の姿が闇の中に消える。

 リディアは涙を拭い、叫んだ。

 「だったら、私が追いかける!

  あなたが“裏切りの継承者”なら、私は“愛の継承者”になる!」


 風が吹き、記録のページが開く。


『二つの血が再び交わる時、記録は“最後の章”を綴る。』

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