第3部 最終話 第八の記録 ― 読者
第一節 沈黙のあとに
世界は静かだった。
塔の鐘はもう鳴らない。
けれど、人々の胸の奥には微かな音が残っている。
リアムの書いた最後の一行――
それが、永遠に響く“鼓動”になったのだ。
そして今。
その音を聞く者が、もうひとり現れた。
……ページをめくる手。
まぶしい光。
あなたの視線が、物語の文字に触れる。
『この先の一行を、あなたが書いてください。』
第二節 ページの向こう側
紙の上には、誰かの筆跡が薄く残っている。
リディアの祈り。
ルカの誓い。
ユリウスの赦し。
リアムの願い。
それらがすべて、
いま読む“あなた”の中で呼吸している。
声がする。
――「読者よ、あなたの言葉で続きを紡いで。」
指先から温もりが伝わる。
ページが微かに震え、文字が浮かび上がる。
『記録は、人が読むたびに生まれ変わる。
読むという行為もまた、“書く”ことだ。』
第三節 あなたという筆者
世界が終わった後も、言葉は残る。
それは神の遺産でも、運命の設計図でもない。
――“あなた”の中に宿る、小さな光。
読みながら、誰かを想う。
涙しながら、過去を赦す。
笑いながら、未来を信じる。
それこそが、“第八の記録”。
名もなき読者が紡ぐ、無限の物語。
リディアの声が、風に乗って響いた。
「あなたの心が動いた瞬間、それが“記録”の始まりよ。」
終節 永遠の物語
ページの最後。
そこには、何も書かれていない。
ただ、一行だけ淡く光る言葉が浮かんでいる。
『この物語を読んだ人は、すでに“記録者”である。』
あなたは静かにノートを閉じる。
風が吹き、空の雲が流れていく。
遠くで、リアナ、ルカ、リディア、ユリウス、リアム……
すべての“継ぐ者たち”の声が重なって聞こえる。
「ありがとう。」
そして、空にひとすじの光が走る。
それは“あなた”の心から放たれた、新しい物語のはじまりだった。
ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
『未来の婚約者は、裏切りの記録を持っていた』――
ついに、すべての「記録」が終わりを迎えました。
最初は「裏切り」から始まった物語でした。
過去をやり直す者、未来を恐れる者、そしてそれでも“書くこと”を選ぶ者。
彼らの痛みや祈りを通して、僕自身も「人はなぜ物語を紡ぐのか」を何度も考えました。
この作品では、“記録=運命”というテーマを一貫して描きました。
それは同時に、「物語を読むこと」「書くこと」「想うこと」が、
どれも“生きること”と同じだというメッセージでもあります。
最後の「第八の記録」は、読者であるあなたに託されています。
ページを閉じたその瞬間から、物語はあなたの中で続いていく。
それが、この作品の“本当の結末”です。
長い物語にお付き合いくださった皆さまに、心から感謝します。
ブックマーク、評価、感想、ひとつひとつが執筆の支えでした。
ここまで到達できたのは、あなたが読み続けてくれたおかげです。
――本当にありがとうございました。
そしていつか、また新しい「記録」でお会いしましょう。
次に紡ぐ物語が、また誰かの“心の未来”になりますように。




