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2つ目の条件


「よくやったな……民の立場にたって上手く対応できていたぞ」


 ロゼが声をかける。慰めなのか、本音なのかは分からない。だが、セシルの気持ちは暗いままだ。


「兄さん……」


「あとは、俺に任せろ」


――あぁ、ロゼ兄さんは僕も、シチ兄さんのことも考えているんだな……正直、リズを連れてこなくて良かった。こんな顔とても見せられない……



「セシル、少し話せるか?」


 帰り際、父から呼び止められる。


――ここは、城に引きこもっていた時父と食事をしていた部屋だな。懐かしい……



「……このようなことがあったが、シチの手続きが終わり次第、次の王を決めなければならない」


 さすがに、息子を追放したあとだからか、こんなに気落ちした様子をあからさまに出す父を初めて見る。


「はい、決まりですからね」


「そうだ、こうやってお前を呼び出すことも本当はあってはならないことだが、お前の妻……和の姫にも関わることがあってな」


「リズですか?」


「あぁ、和の国との取り決めで、伴侶となる夫の条件があると話しただろう。1つは独身……実はもう1つある」


「もう1つ……」


「正直、お前がここまでやってのけるとは思わなかった……いや、みくびっていたとかではないんだ……だが、予想以上だったことも認める……」


 嫌な予感がする。まるで、自分がその2つめの条件わ満たしていないかのような言い方だ。


「2つ目の条件というのが、モテない、だ」


「!!??」


 王はいたって真剣に話す。


「お前は見た目も母に似ており息子ながら美しいと思っている。だが、その……なんだ、モテるとは別問題だっただろう?」


 父親に美しいと言われることにも引くが、何度聞いても理解できない。



――モテない?? モテないとは……


「最近のお前の活躍ぶりに加え、このような記事が出回っている……」


 そう言って見せてくれたのは、日付が1日ごとに更新される民衆向け、貴族向けの様々な新聞だ。



「こっ……これは!?」



 そこには、女神に愛される領主様だけではなく、リズを微笑みながらエスコートするセシル、港や王都で業務を行う写真があらゆる角度から撮られている。


『第8王子 隠されていた美貌』

『女神にすら愛される領主様』

『他国の姫の心をつかむ王子、セシル様』

『女性ファン急増、末王子の愛人希望者殺到』

『抱かれたい王子ランキング、100週連続1位』

『隠れファンクラブ、ついに公式化』



「なんですかっ!! これは、どれも隠し撮りばかりではないですか!!!!」


「日に日に記事が増えてな……ついには公爵家のご令嬢から第2夫人の話が出てきてしまったんだ」


「公爵家からですか!?」


 ニアと対向する家紋のご令嬢が、第2夫人でもいいなど、前代未聞だ。ニアですら、様々な条件を出せるほど、選び放題な立場であるというのに、そのような申し出を直々にするなどありえない。通常、パーティなどで偶然を装い、建前上殿方から申し込むのがこの国の暗黙の了解だ。


「どうやら、お前に熱を上げてしまっているようでな……困り果てた公爵自ら、恥をしのんで申し出てきたのだ」


「公爵自ら……」


「正直、このような事態は想定していなくてな……この国では妻を何人迎えても問題ないだけに、和の国との約束がなければ、お前はこれ以上にない強い後ろ盾をもてることになる」


「まさか……」


「そのまさかだ、和の国では男側が揺れないようにと、モテない男をとあらかじめ条件に出していたのだが……今になってこのような事態になるとは……」


「いえいえいえっ!! 公爵だろうが、僕が揺れることはありません。妻の座はリズ1人と決めています」


「相手側は娘の熱が冷めるまで隠れ愛人でもいいと……」


「愛人もありえませんっ!!」


「お前が、公の場で顔を出すようになって、世間が隠れ貴公子だと騒ぎになってしまっているのだ」


――なんてことだ、引きこもっていた代償がこんな形で現れるなんて……



「とにかく、ありえませんから断りの返事を……」


「それが、公爵が今回お前を直接見ようと来ていたな……裁判の様子を見て是非一度話をと今待たせているところなのだ」


「っ!?」


 そう言うと、使用人に公爵を通すようにと声をかける。入ってきたのは、厳しい顔をしながらも品のある風格の公爵だ。


「いや、立たなくて構いません。このような日に押しかけてしまい、失礼を承知でお話があります。さすがに、奥様同行のもとで話せる相談ではありませんので……」


 王族とも張り合えるだけの特別権利と資産をもつ公爵が、ここまで下手に出てくるとは予想外だ。


「いえ、まぁ……そうですが……」


「娘は、今年成人したばかりでして……当然婚約者もいました。ですが、あなたの写真を見て以来、食事も喉を通らず、毎日上の空でして……」


 公爵レベルの方が、肩を落とし憔悴しきっている。


――なるほど、どんな無茶を言う方かと思っていたが、打つ手はすべてしきったようだな。しかし、これからもこんなことが続けば、リズが不安になる。もし、和の国にいるあの兄にこのような噂が耳に入れば……



 2つめの条件にこのような項目を挙げたことも、あの兄であれば納得だ。



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