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黒幕はだれか

 イナ国からキアが遊びに来ることになった。こちらから出向く予定だったが、どうしても自分が向かうと書いてあったこともあり、リズとともに出迎えの用意を行う。


ーー先日の話の返事はもう少しまとめてから直接話をしに行くつもりだったが。まぁでも前回は美味しい料理に見事に装飾された城で出迎えてもらったからな。今回はこちら側がもてなそう。



 リズと馬車の出迎えの準備を行うと、なぜかロゼや王である父の馬車が到着する。


「?」


「一体何を考えている」


「セシル……どういうつもりなのだ」


 2人とも馬車を降りるなりセシルに詰め寄り、怒っているように見える。


「何って一体どうしたのです?」



 セシルが戸惑っていると、他の兄弟達の馬車もこぞって集まってくるではないか。


「????」


「やぁ、セシル。お前も思い切った決断をしたものだな」


 一体なんのことだか分からないまま、リズと2人で戸惑っていると、キアがやってきた。


「兄さん!! 嬉しいよ。イナ国の手続きの書類はもうこちらの国に送ってあるから、あとは荷物をまとめるだけでいいよ。もちろん、必要なものがあればこちらで揃えられるから本当に必要なものだけでもいいし……」


 嬉しそうに興奮して飛びつくキアに、セシルは引き離す。


「あぁ、イナ国から使いがきてな。お前がこの国から離れ、あちらへ夫婦で永住すると書類が送られてきた」


 父は失望したと言わんばかりの眼でこちらを見ている。


「……まさかと思って来てみたが」


 ロゼはキアを出迎えるために華やかに飾り付けられたロビーを見渡すと、


「どうやら本当だったようだな。送り出しのパーティなど、招待状が来た日には目を疑ったが」


 そう言って、セシルの名が書かれた招待状を見せつける。


「それは、一体?」


「兄さん、正直諦めていたんだけど、私を一人にしたくないと手紙が届いた時には何度も読み返したよ。義姉さんも一緒に来てくれるだなんて、夢みたいだ」


 キアはまだ、興奮したようだ。


「セシル様、これは一体?」


「いや、僕にはなんのことだが‥‥‥とりあえず、いったん中へ……」


「もう良いっ、イナ国はお前の母方のゆかりの地だ。無理に引きとめはせん。あちらは豊かな国で、苦労した領地経営をせずとも楽に暮らせるだろう」


 そう言うと、父はその場を去ってしまった。ロゼはセシルに抱きついたままのキアを見ると


「俺も、考えが変わることはある。特に家族に関してはな、だからお前を責めはしない。元気でな」


「っ!? ロゼ兄さん少し待ってくっ」


「セシル、この地は誰に譲り受けるつもりなんだ? ロゼ兄さんはすでにいくつも経営しているし、新しく子どもが生まれるのでは移り住むのも難しいだろう? 当然次男であるこの俺が……」


「いやいや、ニイ兄さんは貿易に関しは疎いでしょう。妻が外交に精通している僕の方が……」


「セシルっ!! この前のパーティではひどい言い方をしていた兄たちに任せられないよな? 俺は他のやつよりお前をかわいがっていただろう?」


「なにをっ? 一緒にいじめていただろう!? なっ? セシル、それなら15のパーティの時、お前に言い寄ってきたレディたちをあしらったのは誰だったか覚えているだろう?」


「安心しろ、王位継承権から外れても、唯一無二の兄弟だろう? 領地はいらないから、今後イナ国の輸入を是非こちらに融通して……」


 我先にと、集まってくる兄たちと抱き着くキアで身動きがとれなくなる。馬車へ乗ろうとする2人を引きとめたのは、リズだった。



「お待ちくださいっ!! お義父様!! お義兄様!!」



「「っ!!??」」



 通常、レディが大声を出すことなどありえない。だが、その効果は大きく、混乱したその場が静まる。



「皆さん、どうか、お待ちください」


 今度は静かにそう言うと、セシルを見る。セシルはそっとキアの腕を外すと


「キア、なんの取り違いがあったか分からないが、僕はイナ国には行くつもりはない。それに、そのような重要な返事を手紙で済ませることもない」


「そんな、確かに兄さんの名前で返事が……」



 そう言って、手紙を取り出す。


「確かに、ここに僕のサインが書かれているが、僕の筆跡とは異なる」


「どういうことだ? 誰かが偽造したということか?」


 ロゼはその手紙を確認すると、静かに話す。


「セシル、この紙と封は本物だ。誰かがお前を語り、この混乱に乗じて王位継承権の剥奪を企てたのだろう」


「それは……」


「……シチか」


 その名前に皆が口を閉じる。あのあと、王位継承権を奪われ大人しくしていると思っていたが、他国をも巻き込んだこれだけの騒動を起こすにはよっぽどの高い地位がなければ出来ない。


「それと、協力者が近くにいると思っていい」

 

 ロゼの言葉に執事を含め、使用人たちが凍りつく。


「この者たちのはずがありません」


 セシルはすぐに否定する。確かに、ここまでの内情を知り、セシルの部屋から便せんと封を持ち出せるものとなると限られる。


「あの……」


 1人の使用人が小さく声をだす。


「どうした? 知っていることがあれば申せよ」


 執事が使用人に諭すように伝える。

 

「実は……コカラさんがいらした時に、その、一緒に来ていたもう1人の方が、先日セシル様の部屋の近くにいるのをお見かけしまして……」


「あの従業員か……」


 貴重な調味料が入ったと聞いて押しかけてきたコカラと共に、珍しく一緒に来たいとついて来ていた。



 コカラは、料理に興味をもってくれたのかと喜んでいたが、城の中を探っていた可能性が高い。



「すぐに調べてくれ」



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