弟、可愛い!?
「なぁっ!? おっ……おとう……と、だと……」
あれほど、リズのことを姉さんと呼んでいたのに対し、セシルに弟と呼ばれたことにショックを受けている。
――上官の立場の割に感情はむき出しで、政治的な関係を考えないあたり、まだ若いのだろうな……確か、イナ国の成人年齢は16とかだったな……おそらく、早くに父親を亡くして、経験のないまま上官になったところなのだろう。
「いや、そんなまさか。占術師によれば、大叔母の子孫は女性で、王家に関わるだろうと言っていたのだぞ!?」
「占いのことはよく知らないが、まぁ当たっているな。母が王である父の妃となったところまでだがな……その後、僕が生まれたんだ」
「しかし、国1番の占術師だぞ!? 確かに……占いはあくまでも可能性とは言われたが、彼の占いのおかげでその黒ダイヤにも出会えたのも事実だと言うのに……」
「あのな……ロザード国、現国王のことは知っているだろう。8人全員男だぞ? 本人ですら驚いていると思うぞ」
「た、確かに……ということは、彼女ではなくこのダイヤの持ち主は本当に……」
「あぁ、僕だ……そしてどうやら唯一の君の肉親になる」
「そう、ですか……」
「まぁ、僕もずっと末の立場だったから今になって弟が出来ることに正直戸惑っている。だから、姉と思っていたら兄だったと驚く気持ちも分からなくはない」
「はい……」
すっかり最初の頃の威厳がなくなってしまった弟に、肩をポンとなぐさめる。
「ふふふ」
「?」
「ごめんなさい、2人がよく似ているので、つい……つまり、2人は血のつながりのある家族なのですね?」
「まぁ、そうだな」
リズはそっとキアを抱きしめ、頭をなでる。
「!!」
――なぁーーーーーーーーーーーーっ!?
心の声と同時にリズの手を思わずつかみかける。
「では、間違ってはいませんわ。私は義姉さん、ですわ」
「っ!?」
リズの言葉に、思わず手が止まる。
「もちろん、大叔父さまの遺してくれた資産は私には関係ありませんが、セシル様の弟は私の大事な義弟ですわ」
「リズ……」
「義姉さん……」
「それに……なんだかセシル様を幼くしたようで、可愛らしいですわ」
「「かっっ!!??」」
――こっ、こいつとほぼ同じ!? えっ、いや、確かに少し前までは仕事もせずに引きこもっていたし? 幼かったとはいえ勝手に落ち込んで人との付き合いもあからさまに避けていたけどもっ!! いや、あれ? 情緒乱れがちで立場とか気にせず振る舞うって、ほぼリズと出会う前のぼくと同じ?
どうやらはキアも何か言いたげに、こちらを凝視している。
「義姉さん……私と…………にっ、兄は似ておりますか?」
間接的に兄と初めて呼ばれたことに思いのほかギュンとしてしまう。
「えぇ、見た目もどことなく似たものもありますが……なんだか思わず、セシル様だなぁって思ってしまいましたもの」
少し照れたように話すリズに更にギュギュンとなる。
「…………兄さん」
「っ!? おっ……おぉ、なんだ?」
急にこちらに兄呼びで話しかけられ、普段とは異なる言い方になる。
――なんだよ、おぉとか……兄さん達みたいじゃないか……
「初っ端から失礼な態度を、すみませんでした。今年父が他界し、私1人で父の跡と残された土地の管理をすることになり……麗しい姉ができると思いつい舞い上がってしまっていました」
「いや……イナ国の成人年齢は他国より早いと聞く、1人でその重役は、不安になるのも仕方ない」
「ハハッ、16です……この国では成人扱いですが、他国では示しがつかないので19と言って動いています」
ロザード国は18で成人とされており、成人の儀のあともしばらく引きこもっていた身としては、キアが他国とやりとりしながら、1人で領地のこともやりくりしてきたことに、ただただ関心してしまう。若さとか関係なく、十分にその役目を果たせている。
「それは、すごいな」
「すっ!?」
思ったことがそのまま口から出てしまい、キアは急に褒められ、顔を真っ赤にさせる。
――あれ? なんだ、ちょっとかわいいぞ!?
「ごほんっ……それよりも、本来であればこの城や土地はあなたの……兄さんのもので、お渡しするまで一時的に預かってきたにすぎません。この地は貴重な資源が豊富にとれますし、大きな災害もない安定しています……その、どうですか? あなたに……兄さんにお渡しすべきもので、もし良ければ一緒に管理なんてことも……」
ギュギュンッ!!
――なんだ!? これは!! 急に可愛いが増してきてないか!? リズとは違う……なんというか、これは、ロゼ兄がリズに持つ感情に近いのか!?これが、兄の特権? 弟可愛いというやつか? いや、でも兄さん達は僕にこんなギュンとしたことないと思うのだが……
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