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新婚旅行…なのでしょう?


 休憩も入れて、10日ほどをかけゆっくりとイナ国へと向かう。


「〜〜〜〜♪」


 まさか鼻歌を歌うセシルに、リズは驚く。


「セシル様、なんだか機嫌がよろしいんですね?」


「あっ、あぁ。まぁ、な」


――危ない、まさか国を出るのが初めてで浮かれているとは、さすがに格好が悪い……しかし、イナ国は希少価値の高いものを扱う意外の情報があまりないんだよな。正直、興味深いが今回はあくまでリズが招待されたんだ……控えねばならないな……


「まぁ、砂地が見えますわ」


「なっ!! あれが!! 本当に水場がないのだな!! あっ!! リズっ、あの鳥はロザード国では見かけない種類で!!」


「えっ、そぅですか……」


「そうだ!! それに、空気が乾燥しているな!! 先ほどから風にのって砂が飛んできているのだろう!! ほら!! 砂ぼこりがこんなに!!」


「えぇ……ふふっ、セシル様楽しそうですね」


「っ!? いや……なんでもない」


「そんなことないですわ。私も、船旅は大変でしたが、新しい港に停まるたびに色んな国の方々と話せて楽しかったですもの。こうやって景色が大きく変わると、新鮮ですわ」


「まぁ、な……」


――やってしまった……先日のパーティで兄さん達に引きこもりだの、人付き合いを避けてきただのバラされたところだというのに……そのくせ外出に浮かれるなど引くだろう……


「……本当は……この誘いは私のただのわがままなのですわ」


「?」


「舞いが他の国ではの方々に認められたこうやって来て欲しいと言われるなんて……まるで自国を褒められたみたいで嬉しかったんですの」


「リズ……」


「領地に貢献できるなんて言いましたが……浅はかな判断するをしてしまったのではと、不安でしたの。だから、セシル様が喜んでもらえてるなら、すごく嬉しいですわ」


「……あぁ。リズと出かけるのは好きだ」


「っ!! はっ、はい……」



 ニアは体調が落ち着くまでは故郷に帰ってるとのことで、ロゼがその間他の夫人たちと離れられる良い口実が出来たと喜んで領地の運営に賛成してくれた。ロゼも、リズからの頼みだと聞くと、瞬時に快諾してくれた。


「……こうして、2人で馬車に乗っていると、初めて会った時のことを思い出すな」


「そうですね……あの時、セシル様が1日休憩してくれたこと、とても嬉しかったですわ」


「そうか」


「ふふっ、なんだか新婚旅行みたいですわ」


「しんっ!?」


「ニアさんから、聞きましたの。最近は貴族の間で流行っているのだとか……」


「そうだな……んんっ、これは……そうなのだろう」


――絶対良い宿を確保しよう……


 お忍びの格好をしているが、最初の頃のような一般の宿に泊まるようなことにはならないよう、セシルは少ない情報から宿を先にリサーチし、休憩中も入念に打ち合わせを行い、先に使いを出しその都度一流の宿場をおさえることに成功した。



「わぁ、あ」


 リズの驚きの声に満足する。


「気に入ってもらえただろうか?」


 イナ国に入った辺りで、ようやくの宿だ。ロザード国とは異なり、噴水や中庭の水場などふんだんに使われている。


――水大国と言われているだけあるが、こんなにも潤っているのか?


「なんというか……とても贅沢ですわね」


「そうだな……国同士の付き合いこそ歴史があるが、積極的な交流がないのも分かる気がするな」


 わざわざ他国とやりとりしなくても、ここまで潤っているのならば、そこにコストをかけていないのだろう。改めて、リズのつかんだチャンスの大きさを実感する。


「希少な調味料だけでなく、食べ物もすごいな……」


 部屋には新鮮なフルーツが山盛りに運びこまれている。清潔なシーツは絹で出来ており、肌触りも良さそうだ。


――寝心地も良さそうだ、2人で…………



 バチーンッ!! 頬を叩く。


「セシル様?」


「なんでも……ない。疲れただろう? 休んでくれ」


「…………ご招待頂いたところまではもう少しです。それに、旅中はずっと離れられては寂しいです……」


 リズは旅の合間にも、舞いの練習をするなど忙しくしていた為、なるべく邪魔にならないよう、寝る時間をずらしていた。



「これは、新婚旅行でもあるのでしょう?」


「〜〜っ!?」


「今日はセシル様と一緒に寝たいです……」


「〜〜〜〜っ!!!!」







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