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兄様のたくらみ、妹かわいい


「コンニチハ」


 セシルが話しかける。リズと同じ黒髪をした男性が、貿易大臣となにやら話をしているようだ。横から見たその顔は黒髪と同じように黒い瞳をしており、どことなくリズの雰囲気に似ている。さすが、同じ国の出身だ。




「あぁ、第8王子殿ですか……ようやく和の国の重役が来られたようで、我が国との今後についてお話をしていたところで……」


 大臣はリズに一度も会うことはなく、まさにこの時を待っていた。国益の話が出来る者をと、リズをはなから除外していたのである。正直、直接貿易のやりとりの話ができるこの男の方が、リズよりも皆にとっては価値が大きいのだろう。リズやセシルを押しのけるように他の兄達が割り込んでくる。



「和の国の使者の方ですか? 初めまして、ロザード国の第2王子でニイと言います。この度、末弟の妻にと美しい姫を義妹として迎え入れることができ、大変嬉しく……」


「それよりも、我が領地の特産品について是非お話をさせていただきたいのですが……」


「和の国の義妹を持つ身として、是非お近づきに……」


「実は妻に歳の離れた美しい妹がいまして、今度は和の国の嫁に是非……」



 使者との話を取り合うように第2から第5王子である兄たちがアピールする。さすがの勢いに、大臣が後ずさりするほどだ。



「リズ、大丈夫か? 怪我はない?」


 兄たちに割り込まれ、挨拶をしようとかがみ姿勢だったリズは体勢を崩し、よろけたところをセシルが慌てて支える。そのため、完全に和の国の使者への挨拶が出遅れてしまった。


「大丈夫です。それよりも、私のせいですみません……」


「何を言う。今回のパーティは、僕は来なくても良かったんだ。だが、君に久しぶりに母国の者と会って話でも出来ればと思っていただけだ」


「セシル様……ふふ、私はもうロザード国に嫁いだ身。母国のことは懐かしいですが、今はこの国の者として幸せを十分にいただいてますわ」


「リズさん、大丈夫?」


 リズがふらついたところを見たニアは、他の国の使者と話していたロゼの隣を離れ、慌ててかけつける。


「えぇ、セシル様が支えてくれたおかげで大丈夫です」




 先ほどまでリズに取り入ろうと声をかけてきた夫人たちも、リズよりも直接和の国の使者へ取り入った方が良いと判断し、ここぞとばかりに夫の隣で微笑みを絶やさない。それどころか、セシル達の弱点をついてくる。


「そういえば、和の国の姫君が嫁いだ第8王子は今までこのような場に出てこられたことはありませんわね? ニイ様」


「あぁ、お恥ずかしいことに、末弟は長いこと城にこもりきりでして……」


「領地では女神様のおかげともてはやされているようですが、どうやら前領主が作ってあった港を少し整備しただけのようとか。我が弟ながら、何かを一からするといった経験がないもので、少しまだ経験不足かと……」


「それでしたら、サンタ様は既に和の国に近いいくつかの国への新しい航路を活用しはじめた開拓者ですものね」


「あら、それは他の方の功績を途中から買収しただけだと私の叔父が話しておりましたわね」


「ヨンのところなど、まだ何の功績も出していないとその叔父が先日嘆いてらしいがな」


「なっ、ゴフのところこそ、妻頼みの経営と聞いたぞ。シチのような二の舞を起こさないことを願うばかりだな」


「そういえば、私の妹はよく私に似ていると評判なのですが、和の国のお好みはどういう方なのでしょうか? 貴方様のような方のお嫁にいければ、姉としても安心なのですが」


「その妹を娶りたいとあなたの夫が熱望しているという話は、社交界でも有名ですわね?」




――うぅっ、無理だ。こんな地獄のようなかけひき、僕には到底参加など……


「マワリノカタハ オサガリクダサイ」


 使者の通訳が終始、何を言っているか使者に訳をしたあと、返事を返す。



「っ!?」


 使者はゆっくり、離れてしまったセシル達に近づく。その男の顔にリズは驚きを隠せないでいた。


「あ、あ……あに様っ!?」


「え……」



「久しぶりだ、リズ。思っていた以上に元気そうだな」


 和の国の使者とは、リズの兄であり、和の国の主君、まさかトップが自ら海を渡ってきていたのだ。




「アニサマ?」


 リズがとっさに母国語を話した為、周りは理解できずにいた。だが、セシルは別だ。意味は分かるが、事態についていけてなかった。


兄様あにさま!? どうして!?」


「我が妹は、遠く離れた兄に文1つ送らないでいるときたものだ。もし、悲惨な状況で送れないでいるのであれば、そのままお前を連れて帰るつもりできたのだ」


「いえいえ、えっ!? 兄様が来てはダメでしょう!! 国はどうするのです」


「そんなもの、代わりに任せれば良い。お前を連れて帰れる者など、俺しかいないだろう?」


「何を言っているんですか!!」


「……少し口調がきつすぎやしないか? しばらく会わない間に、人格を変えてしまうような辛いことでも……」


「ありません!! どちらかと言いますと、ロザード国の方が、いえ、セシル様は女の私の意見を聞いてくれますの。そのおかげで、兄様にもお伝えできるようになっただけですわ……というよりも、そうでなくても何ヶ月も国を人任せにするなど言語道断です!!」



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