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当然ですが近いですわ


「どうした?」


 ロゼとニア、セシルとリズの4人で朝食をとる。朝からも勉強熱心なリズから、いわゆる殿方の下心について言及されたセシルはどう交わせば良いか、

疲れ果てていた。


――いったい、どんなレッスンをしているんだ……


 見過ぎていたのか、セシルの視線にロゼが気づく。


「いえ……ニア公爵夫人はリズにどのような内容のレッスンを?」


「ニア夫人でいいですわ。公爵家は嫁ぐ前の姓、今は旦那様と領地を任されているただの領主の妻ですので……」


 やたらと妻を強調させるように訂正する。王の意向により、王族ではあるが、正式な王位継承が決まるまでは、領主として行動するようにとされている。だが、実際は自身の元の地位あるいは王族の妻をアピールする夫人が多い。ニアはその中でも公爵家のため、敬意をもって接していたつもりだったが断られてしまった。


「分かりました。ニア夫人はどのような授業を?」


「……レディの講義内容を詳しくお伝えする必要はないかと。それに、ご依頼されたとおり、貴婦人としての振る舞いは順調ではなくて?」


 ニアの言う通り、パンばかり食べていたリズは、なんとかナイフとフォークを使い分けしながら他の食事もしているようだった。


「口に合わないものばかりだと思っていたが……」


「あなたにはしたないと思われるのが嫌だったようですわよ? 筋はいい方ですから、食事の作法はすぐに形になりましてよ」


「……感謝する」


「あぁ、俺からもお礼を言っておこう。これで義妹がお腹を空かせずにすみそうだ。感謝するぞニア」


「いっ、いえ……旦那様のためですもの……」



――確かに、それ以外でも目に見えて変化がある。僕も負けていられないな。


 昨日現地に行き元漁師だった家庭の民から話を聞くことができた。資金面も課題だが、それは過去の収益ですぐに取り戻せる見通しだった。だがそれ以上に深刻な問題として、海の生態についてももう少し調べてみなければ分からない。



――おそらく、無計画な乱獲で魚が獲れなくなってしまったのだろうな。それ以外にも、ここの生態系は特殊な性質がありそうだ……少し時間はかかるが、船の改修と海の生態調査の両方をしていく必要があるな。




「セシル 様」


「あっ、あぁ。なんだ? リズ」


「聞いてませんでしたの? 今日はダンスレッスンですが、私と旦那様が……お、お手本となって致しますので、リズさんのお相手をして欲しいとお話してましたのよ」


「俺が義妹の相手を務めても構わないのだが」


「いいえっ!! それは……実際に踊るだけでは普通のやり方すぎですわ……人の真似をしながら自分も身体を動かすことこそ公爵流ですのよ」


「そうか」


 ロゼは少し残念そうだが、セシルもリズの相手は兄といえどゆずれない。


「兄さん、リズの相手は僕がしますので、どうかリズの上達の為にもご協力お願いします」


「当然だ」



 なんとなく、ニア夫人の思い通りになった気もするが、思いがけずリズとのダンスレッスンが出来ることに、内心楽しみなセシルだった。






「そっ、そっ、それではっ、よよろしくて? お手本をよくみ、みておぼえるの、ですのよ?」


 ロゼとのダンスにガチガチに緊張するニアだったが、演奏が始まるとさすがの足どりだ。公爵家の名を背負ってきただけのことはある。ロゼとのダンスは気品にあふれるものだった。


「ふぅ、ではダンスがどう言うものか分かったと思いますわ。まずはペアの方と向かい合って、足のステップから致しましょう。こうですはっ!!??」


 リズに話しながらロゼの手を取り、無意識に向かい合ったニアは、当然目の前には自ら腰に手をまわさせ、密着するようにロゼがいることに一瞬気を失いそうになる。


「……疲れたか?」


「いっ、いえ……なんでもありませんわ……先ほどのダンスが久しぶりでしたので、少し目がまわってしまったのかと…」


「そうか……休むか?」


「平気ですわ、むしろこのまま支えて頂いていた方が……」


「ん?」


「〜〜〜〜っ、やっぱりなんでもありませんわ」



――なんだ、この状態は……


 兄夫婦のほぼ一方的な甘い雰囲気に少し気まずさを覚えるが、実はセシルもダンスはかなり久しぶりだった。社交場でも誰とも接触をしないように避けていた為、うまく踊れるか自信がなかった。先ほどのダンスは、ニア自身が優雅に踊っていたが、やはりそのステップを巧みにこなしていたロゼのリードも見事になものだった。



――兄さんのダンスを先に見れといてステップは思い出せたが、先にあんな完璧なものを見せられると自信がないな……


 リズも真剣に2人のやり取りを見ている。


――いや、リズはもっと初めてのことで大変なんだ。ここは僕がリードをしなくては……



 向かい合わせになり、リズの腰にそっと手を回す。ゆっくり、足のステップを交互に規則正しく踏んでいくのだが


「っ!?」


 セシルの一歩がリズよりも大きかった為、リズがうしろにバランスを崩すように倒れそうになる。


「リズっ!!」


 とっさに腕を引っ張り、リズの後ろにまわりこむように一緒に倒れる。



「リズさんっ!?」


「大丈夫か?」


 


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