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白夜の世界  作者: 璃緖
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プロローグ

2XXX年

現代では人間とAIが共存している。

人間の全てはデータベース上に保存され、そのデータの分析・管理をAIが行なっている。

あくまで人間はAIを利用する側であり、AIに利用されることはないと考えられているのが現代だ。


しかし、最近妙な噂が流れている。

娯楽の…ゲームの分野の話ではあるが、たまにおかしいらしい。

クエスト報酬が最初に提示されていた内容と違うとか、モンスターのスキルが変わっただとか。

ニュースになっていないのでそれほど大きな問題にはなっていないのだろう。

しかし、連日掲示板はそんな妙な噂で持ちきりだ。

それには僕がやっているゲームも噂になっていた……というよりほとんどの噂がそのゲームでの出来事のようである。


ゲームの名はクリエイ卜ワールド。

世界中で良くも悪くも有名なMMORPGである。

このゲームは世界で初めての試みを行なっており、一部のNPCやモンスターにAIが使われている。

それが賛否両論を生んだ原因だ。

つまり、バグのような出来事が日常的に発生するのだ。

それを受け入れられる人間もいれば受け入れられない人間もいたというわけだ。

それでも多くの人間が一度はこの世界にログインしたことがあるだろう。

このゲームの煽り文句はこれだ。

――この広大な世界であなたが夢見たあなたになってみませんか

このクリエイトワールドにはゲーム開始時にプレイヤーが決められる項目がある。

キャラクターの容姿や種族、職業や性別など他のゲームでもあるような項目の他に、このゲームにしかない項目がある。

それは、キャラクター作成の際に1つだけ自分が考えた能力を手にすることが出来るというものだ。

これはこのゲームの世界にスキルとして存在するか否かには関係しない。

つまり、空を自由に飛び回ることも……海を自由に泳ぎ回ることも……なんだって叶えられるのだ。

誰だってもしもこんなことが出来たら……と考えないことはないだろう。

能力作成の自由度は無限大。故にリリース当初は大きな話題となり、知らない人はいないとまでいわれている。

ただ、能力の詳細や条件をきちんと決めないと思ったようには使えないため、比較的想像しやすい能力が多かった。

僕がこのゲームをやっているのもこれが決め手だ。

とまあ、AIが使われているという点と、プレイヤーが産み出した能力が存在するという点で色々な部分で想定外の事が発生しているのだ。

そんなことを誰もが知っているはずなのに最近の噂の頻度はおかしい。

まるでリリース当初の何もかもが新鮮で、何もかもが分からなかった頃のようだ。


まあ、僕には関係ないけどね。

──本当に行くのか?

そのゲームへのログインをするために準備をしていた僕に片割れが尋ねる。

「行くさ。せっかくお前が教えてくれたんだ。

 僕はお前といられるならどこだって構わないけれど、お前が自由になれる所があるというならそこで生きていたい。

 ……だからこれはただの僕のわがままだ。

 お前がやめろと……いやだというならやめるよ。」

──そんなこと言ってもう!兄様(あにさま)のそれはわがままじゃないよ!

 ボクだって兄様(あにさま)といられるならどこだってかまわないし、この現状はボクのせいみたいなものだ。兄様(あにさま)がやりたいようにしてほしい。

 まあ、ボクとしては傍で兄様(あにさま)を守れるから願ったり叶ったりだね。

 現実はゲームのようにはいかないから……

不用意な発言で片割れを悲しませてしまったようだ。

だけど……そうか。

この想いが独りよがりでないのならためらう理由はどこにもない。

それだけでこの選択が間違いかもしれないと思う必要はなくなった。

「じゃあ……行くか」

そうして僕らは何時ものようにゲームにログインした。

もう戻れないことを承知の上で。

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